希望の光


4年に一度、7月から8月にかけて灯される明りがある。

聖火はオリンピック開会式の数カ月前にオリンポス山で太陽から採火される。
古代オリンピックの開催期間中は全能の神ゼウスとその妻ヘラを称えてヘラの神殿に火が灯されたという。近代オリンピックの採火もこれに基づき、オリンピアのかつてヘラの神殿が建てられていた場所で行われている。炉と祭祀の女神でありゼウスの姉であるヘスティアを祀る11人の巫女が凹面鏡からトーチに点火した聖火はランナー達によってその年の会場まで運ばれる。

火は様々な文明で神聖視されているが、古代ギリシャにおいてもまた同じである。
火はプロメテウスによって天界からもたらされた神聖なものであった。
プロメテウスは鍛冶の神ヘパイストスの作業場から火を盗み、地上に降りて飢えと寒さに苦しむ人間に与えた。火は人間に文明をもたらしたが、かねてから人間に火を与えることに反対していたゼウスはその行いに激怒し、プロメテウスをカウカソス山に張り付けにし、拷問を与えた。
ゼウスはプロメテウスの弟・エピメテウスの元に絶世の美女パンドラを送り込み、病、妬み、憎しみ、悪だくみ等、この世のあらゆる悪が閉じ込められた箱を開けさせることで、人間に炎と文明を得た代償を与えた。箱に最後に残った希望は、プロメテウスがもしもの為に忍ばせておいたものだという。

ロンドン五輪ではそれぞれ過去のイギリスの名選手から「次代を担う若者」として指名を受けた7人の10代の選手たちがトーチを持って会場を走り、大きな感動を呼んだ。
その国を代表する様々な建築家やデザイナーによって趣向を凝らされた聖火台もまた、オリンピックの見所のひとつである。