「闇深ければ、光もまた強し 」


この格言の作者、坂村真民(1909年~2006年)は日本の仏教詩人。祈りの詩人とも言われ、その作品は今もなお多くの人に生きる力を与え続けている。
父は小学校の校長を務めた名士だったが、8歳の時に父が42歳で急逝し、人生が一変する。彼の有名な詩「念ずれば花ひらく」は幼い子供たち5人を苦労して育てた母が唱えていた言葉を詩にうたったものである。

毎日12キロの道を通って中学を卒業し、18歳から短歌を作り始め、この頃から「しんみん」の名を使っていた。
終戦後は愛媛県で高校の教員となった頃から短歌での表現に限界を感じ、現代詩へと転じていった。

「踊り念仏」で知られる時宗の宗祖・一遍上人の生き方に共感し、個人詩誌を発行して一遍の信仰になぞらえ、その後を継ぐ自らの人生の修行と位置付けていた。
58歳からは愛媛県伊予郡砥部町の重信川のそばに居を構え、未明に起きて重信川の川原で大地の石に額をつけて暁天の祈りをすることを日課とし、その習慣は生涯にわたって続いたという。
2004年には自ら発行していた個人詩誌が500号となり、全国から630人の人が集まって盛大な記念大会が催された。2006年に97歳で永眠。明治、大正、昭和、平成を生き抜いた「祈りの詩人」が最期にしたためた言葉は「念」だったと言う。
 

 闇深ければ、光もまた強し

には、
―不幸や悲しいことが辛く大きく深いものであったとしても、そこにはそれに足るだけの強い希望や救いがある―
 
という真民からの励ましのメッセージが込められている。生きていくうえで闇に包まれて立ちすくむような場面に出会っても、心を強く持って希望の光の存在を信じて前を向いて歩いて行きたいものである。