「空間の光は心の光」


空間の光は、その光源、明るさ、色温度、照らし方などによって様々な表情を持つ。
そして光は目に刺激を与えるだけでなく、心にまで響き、心のありように影響する。
ある光空間に身を置くことによって、その光にほっとしたり、気分が高揚したりまたは気分が落ち着いたりした経験は誰にでもあるのではないだろうか。
光空間が人間の感覚に強い影響を与えることはいろいろな場面でみることができる。

人間の内なるものに問いかける光空間として、まず挙げられるのがゴシック建築で、時の権力者が光の心に与える大きな影響を利用して民の心を掴むことを図った代表的な例である。
ゴシック建築の教会内に、天からの光を導き、満ちさせることで神の光としての光の演出が行われた。
人々にとって教会は空間の上から降り注ぐ光に神々しい雰囲気を感じ、神を信じる心を深くし、敬虔な信者として神や権力者を崇める空間となっていた。光が精神性にまで影響を与えていたのである。

私たちも日常生活において光の影響を受けている。

心が弱くなっていて折れそうで辛い時、蛍光灯で一面に照らされた青白っぽい光空間では、心も冷えてしまうような索漠感 さくばくかんをより感じてしまう。けれど間接照明のやわらかく、色温度の低い光に満ちた空間に入ると、その温かい雰囲気に包まれて心が温められたように感じて癒される。
また、光は単に物を認識させるだけでなく、人間の心のありようをコントロールすることができる。

ある時は、心を癒し、ある時は心を落ち着かせ、ある時はその美しさで心に感動を呼び起こす。そして人間のサーカディアンリズムを整え、健康的な生活に寄与することまでできるのだ。
 
空間の光はまさに心に繋がり、心の光となっていく。
 
そんな人間にとって重要な要素である光をもっと意識して暮らしてみてはいかがだろうか。
そして照明デザインをする立場からは、人間の心身共に心地良い光環境の構築に努め、光をコントロールすることによってより豊かで健康的な生活ができることを実証してゆきたいと思うのである。