「どんな物にも、ひびがある。でも、光が差し込むのは、そこからなのさ。」

ナポレオン・ボナパルト(1769年~1821年)は革命期のフランスの軍人、政治家。絶対王政を解体し、ヨーロッパ全土に革命の精神と近代共和制国家の礎を創造する大きな役割を果たした。ナポレオンの生涯は以下のようである。

ナポレオンはコルシカ島で生まれた。士官学校砲兵科をスピード卒業し、1796年イタリア派遣軍事司令官として北イタリアに遠征した。そして連戦連勝してイタリア北部を領土として獲得し1798年にはエジプトに遠征し数週間でエジプト全土を征服した。1800年にはアルプス越えで北イタリアに侵攻しオーストリア軍を破り、イギリスとは講和して国家の安全を確保するという活躍をし、独裁者としてのナポレオンが誕生する。
内政面では税制や行政を整備し、壊滅的な打撃を受けた工業生産力を回復させた。また、フランス銀行を設立して通貨と経済の安定を図り、法を整備してナポレオン法典を発布した。この法典は法の前の平等、契約の自由など近代的な価値観を取り入れた民法で、後に大きな影響を与えている。
1804年には国民投票で圧倒的な支持を得てナポレオン1世として皇帝の座についた。しかし1812年、ロシアに遠征し大敗してしまう。そしてナポレオンはエルバ島に流されてしまうが不屈の精神でエルバ島を脱出してパリにもどり、再び皇位に就いた。その後ベルギーのワーテルローに進軍したが完敗してしまい、ナポレオンの百日天下となってフランス第一帝政は崩壊してしまう。そしてナポレオンはセントヘレナ島に流され、1821年、51歳で波乱の生涯を閉じた。

ナポレオンについてはいろいろな逸話が残されているが、若い頃は非常な勉強家で多くの本を読んでいた。その種類は古今の兵学書、特に砲兵論と攻囲論、次いで啓蒙思想の本、さらには英仏の歴史書、フランスの財政を説いた本にマキャベッリの書などである。
勉強家の彼が読書により多くを学んだことと彼が高い軍事能力の持ち主であったことは無関係ではないだろう。そして決して諦めないでポジティブに行動する姿勢も理性の啓発によって人間生活の進歩・改善を図ろうとする啓蒙思想の影響が大きかったのであないだろうか。

どんな物にも、ひびがある。でも、光が差し込むのは、そこからなのさ。

―どんな物事にも欠点部分はある。しかしその欠点部分から解決の糸口が見つかったり希望の光が見えたりするものさ―

数多くの闘いを制し、短い期間とはいえ皇帝としての復活を果たしたナポレオン。彼はこの格言にあるように、物事を冷静に分析し判断し、物事の負の部分から見えてくる光―希望や成功や解決策など―をしっかり見つめて考え行動する姿勢を持つことで、多くの困難を乗り越えることが出来て成功を収めることが出来たのではないだろうか。

私達はとかく物事の負の部分を厄介で悪い部分としてしか認識しないが、そういう部分からこそ見えてくるものがあるという深い示唆に富んだ言葉として心に留めておきたい格言と言えるだろう。