「空の星になれないのなら、せめて『家庭の灯』になりなさい。」

ジョージ・エリオット(1819年~1880年)はイングランド生まれの小説家。本名はメアリー・アン・エヴァンズ。心理的洞察と写実性に優れた作品を著した。

当時英国は産業革命によって、経済的には絶頂期だったが本格的な小説は男性が書くものだと思われていた。そして女性の地位も確立されていなかった。この風潮から逃れるためにエリオットはジョージという男性ペンネームで小説を執筆したと言われている。

少女時代のエリオットは聖書の伝える福音に信仰の中心を置く福音主義者であり、感受性が鋭く知識欲の旺盛な子供であった。13歳でバプテスト派の宗教色の強い学校に入学するが翌年に母が死去し、父の世話をするために退学する。退学後は家庭で古典や外国語を学んだ。

22歳の時に主知主義(知性、理性の働きを意志、感情よりも重視する立場)の哲学者と出会うことでキリスト教の信仰心に動揺を経験する。彼女はこの時期よりキリスト教から人道主義的な考えに移った。そして人間の心に溢れ、他の人間たちの心に注ぎこまれる純粋な愛は、奇跡や天国などの概念がなければよりいっそう高貴な美しさを持つものだという考えを持ち、それは一生変わらぬ信念となった。

空の星になれないのなら、せめて「家庭の灯(あかり)」になりなさい。

―多くの人々に光を与えるような夜空の星になれないのなら、せめて身近な家庭の中を照らす愛に満ちた温かくて明るい灯になりなさい―

この格言は、華やかで大きな成功によって空の星の光になれなくても、ささやかでも愛をもって身近な家族を照らす光になることこそとても大切なことであるという愛の尊さを述べていると思う。そして足元に光を注ぐことによってその光はいつか多くの人に幸福の光を与える夜空に輝やく星の光へとつながり、平和で幸福な世界が生まれていくだろうという意味も含まれているのではないだろうか。

たとえ家族への愛としての灯りが小さくてもたくさん集まれば世界の人々の平和と福祉に貢献できる大きな光につながっていくことだろうことを願って私達は家庭に灯りを灯してゆきたいと思う。