「太陽がないときには、それを創造することが芸術家の役割である。」

ロマン・ロラン(1866~1944年)は20世紀を代表するフランスの思想家、小説家。戦争反対を世界に叫び続けた理想主義的ヒューマニズム・平和主義・反ファシズムの作家として知られている。1915年にノーベル文学賞を受賞した。

ロランはフランス中部ニエーヴルで公証人の父のもとに生まれた。9歳の頃からシェークスピアを愛読する。16歳でパリに転居し、高等師範学校に学び、歴史を専攻する。優秀な成績で卒業し、母校で芸術史とパリ大学で音楽史を教えながら文筆活動に入る。

34歳ごろから多くの戯曲を書き、「演劇は力と光明を与える娯楽である」という考えを述べた。37歳の時に小説「ベートーヴェンの生涯」を発表。翌年ベートーヴェンの生涯を小説仕立てにした「ジャン・クリストフ」第一巻を発表し、以後第十巻まで8年かけて執筆する。40歳の時に「ミケランジェロの生涯」、45歳で「トルストイの生涯」を発表し偉大な精神の持ち主達を描くことで―「英雄とは思想や力で勝利した者ではなく、心によって偉大であった者のことである」―という魂の英雄主義を掲げる。

芸術家たちの生涯からは読み取れるものは苦悩こそが偉大な創造の源になりうるということだとしている。特にベートーヴェンについては、彼の苦悩と聴覚障害に伴う悲しみは「悲愴変奏曲」などの名曲を生み出したとしている。

ロランは50歳の時にノーベル文学賞を受賞し、晩年は病床で著述を続けたが78歳でその生涯を閉じた。

太陽がないときには、それを創造することが芸術家の役割である。

太陽の光―それは希望であったり慰めであったり人々の生活に欠かせないものである。
何らかの理由でその光を失った時、私達は絶望であったり消失感であったり暗い想いに囚われてしまう。そういう時に私達は音楽や絵画や小説などの芸術作品に触れることで心が癒され、慰められ、そして前進する意欲や活力が湧き出てくることは誰しも経験していることではないだろうか。

私達が救われ、明るい希望を見出して前に進んでいくことができる糧としての芸術作品を芸術家は生み出すことが課せられた役割であるというロランのこの格言は芸術の持つ偉大な影響力を賛美し、芸術家に期待するメッセージとして時代に超えて生き続けていく言葉と言えるのではないだろうか。