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(日本語) 空の色味
色は波長によって連続的な移り変わりをする可視光線であるため、どの色を何と名付けるかはその言語圏の文化によると考えられる。 平安時代、日本では赤白黒青で色彩が表現されていたという。 この四つの色は今でも重要視されており、この四つだけ赤い、白い、黒い、青い…と形容詞化できる。そのほかの色は緑色、茶色、など「色」を付けねばならない。 これは信号機やリンゴを緑ではなく青と呼ぶことにも表れている。青と緑は古語ではほとんど一緒に青と呼んでいた。 今日の空を何色と呼ぶだろうか。 人類は長い間風景に想いを馳せ、絵画や歌でそれを表現してきた。空の色は風景において非常に大きな要素となる。しかし日本の多くの絵巻物や屏風では青色で空が描かれることはめったになく、空については地の紙の色を活かす表現や雲を描く表現が多用されている。 西洋では、すでに初期の西洋画(ジョットの“ユダの接吻”など)から青色の空の表現がされている。もちろん青色が日本で希少であったことももちろんあるかもしれないが、平家物語絵巻などでは水の表現が薄い青色でされていたり、衣服が青い色で塗られていたりする。 日本の画家は空色の表現をあえてすることはなく、対象と空間の関係を描く余白の美を追求してきた。その表現は色ではない形で空を想像させる。 当たり前に青色に空を定義し表現する前に、空気として体感する、名前付けするのは面白い試みかもしれない。 我々の世界にカラー写真というメディアが誕生したのは人類史で言うとごく最近の事である。写真なき時代の色は今も保存されている美術品や記録から想像するほかない。空の色は変わっているだろうか。季節によって違うニュアンスをなんとなく持っているうえに、見え方はその時見た自分の感情によっても左右される。 汽車の煙がもくもくと曇っていた大正時代はグレートーンの空の色だったかもしれない。戦国時代は勇ましい赤色に見えたかもしれないし、飢饉に苦しむ人々は久しぶりの晴れ間にはビビッドな喜びのピンクを感じたかもしれない。 寒さもおさまり、外遊びのハードルが下がる4月。 日本を代表する4月の色…と言えば多くの方は桜のピンク色を思い浮かべるかもしれないが、空の色もまた4月は特別な印象を持っている。菜の花や桜の鮮やかな色とのコントラストをぜひ楽しんでほしい。