光と殺菌1─序章

例年冬になるとインフルエンザが流行するが、この冬は新たに出現した新型コロナウイルス感染症が世界的に猛威を振るい、多くの人を不安に陥れている。インフルエンザなどのウイルス感染を防ぐためには、念入りな手洗いやマスクの着用などによるウイルス対策が必要となる。そして今回の新型コロナのようにウイルス感染拡大を防ぐにはウイルスを消毒、殺菌することで抑え込むことも重要となる。

私達の生活をおびやかす多くの菌やウイルスを殺菌する方法の一つに殺菌灯による殺菌がある。紫外線による殺菌作用を利用した光による殺菌である。今回からは光の持つ殺菌作用に焦点を当てて「光と殺菌」についてみてみる。

太陽光の紫外線の発見は1801年にドイツの物理学者ヨハン・ウィルヘルム・リッターによる。そして紫外線の殺菌作用は1901年にドイツの物理学者ハーマン・ストレーベルが確認した。1936年にはアメリカのGE社、オランダのフィリップ社から殺菌ランプが開発され、1950年代に入ると日本では理髪店での紫外線消毒器の設備が厚生省令で義務づけられたのをきっかけにして一般に普及した。

しかし、初期の殺菌灯は出力が60W程度のものしかなかったため殺菌線出力が低く、殺菌にも照射時間を長く必要としたため、その用途は限られていた。高出力形の紫外線殺菌灯は1970年初期からスイスのブラウン・ボベリ社が開発に着手し、1975年にはヨーロッパで使用が開始されている。1980年には日本のメーカーも製造販売を開始した。

太陽光の紫外線による殺菌作用は古くから経験的に知られており、人間は殺菌作用を利用してきた。現代社会の人工の紫外線による殺菌は、食品関係、医療関係など様々な分野で利用されている。近年、高出力化された殺菌ランプや人体に影響のない殺菌ランプの開発が進んでおり、紫外線による殺菌方法が今また注目を浴びてきている。