春の光を表す言葉




暖かい春の日差しが心地良い季節となった。
春の光はのどかで暖かく、自然を美しく輝かせて見せてくれる。

皆さんの春の光のイメージはどのようなものだろうか。
空気中で景色がぼやけて見えるような拡散されたやわらかい光、新緑を鮮やかに見せる明るい光などいろいろなイメージがあることだろう。
そんな春の光のイメージを表す言葉のいくつかを今回は取り上げてみたい。

春霞(はるがすみ)
―春に霧や靄によって遠くの景色がかすんで見えにくくなること―

空気の湿度は冬に比べて高くなり、春は山野に水蒸気が立ち込める。日中に見る景色は霞み、夜はもやがかったように見えるようになる。
この現象を昼は霞み、夜は「朧」(おぼろ)と言う。

朧月(おぼろづき)
―霧や靄(もや)などに包まれて、柔らかくほのかにかすんで見える春の夜の月。

空気中に漂う水蒸気によって光が遮られたり、乱反射して月の周囲に暈(かさ)を作り、万物をぼーっとかすんだ状態に見せる現象である。春の風情ある月の表情である。

麗か(うららか)
―太陽の光がのどかに照っている様子

春の日がうるわしくなごやかに照って、万物が輝いて見えることを言っている。冬の寒さに耐えていた生き物達が、暖かい春の光を浴びて生き生きとその生命を輝かせているような光景で心が和む風情を表している。

風光る
―暖かくなり、日差しが強くなる春に、吹く風も輝くように思える様子

冬の弱々しい太陽の光は春になると強さを増し、草木の芽吹きを促し、すべてのものを輝かせる。そこに吹く風も輝いているように感じられることを表している。この言葉が季語となったのは江戸時代末だという。

春の光を表す言葉はいくつか取り上げたが、春が訪れた喜びを春の光を様々に表現して表してきた日本人の豊かな感性はやはり素晴らしいものだとしみじみと感じさせられる。

photo by Zoe Rudisill