日本初のライトアップ -織田信長の心根-

夏の光のイベントと言えば花火であるが、最近では夏にも様々なライトアップやプロジェクションマッピングの催しがあり、夏の夜を楽しむ光のイベントが多くなっている。
夏の夜、光に浮かび上がった建物は美しく、しばし蒸し暑さを忘れて見とれてしまうほどである。

ところで、日本で初めて電気照明を使わずにライトアップを行ったのは織田信長であったことをご存じだろうか。
そのライトアップは、織田信長48歳の1581年7月に、ある宣教師が母国に帰国する際に宣教師を送るために安土城で催したもので、城下の家などの火や明かりは全て消させた中で行われた。

記録によると、

安土城とその近くにある惣見寺に多くの提灯を吊るし、道には松明を持った騎馬の武士達を並べ、入り江には舟を浮かべて一斉に松明を灯した。
城下が一気に明るくなり、それはまるで真昼のような様子だった。その光は琵琶湖の湖面にも映り、言葉では言い表せないほど美しく趣のある光景だった。

とされている。

炎に照らされた安土城・惣見寺とその姿が琵琶湖に映った光景は、幻想的で美しく、多くの見物人が出て光のショーを楽しんだとされている。
信長はライトアップが行われた際、宣教師のもとに訪れて共にこの光景を楽しみ、情愛と歓喜を表して去っていったと記されている。「自分も楽しみ、相手も楽しませる。」という若い頃から変わらない信長の心根が伺える。

このライトアップは、当時としては画期的な催しであり、戦に対する厳しく熱い情熱と共に、人情味があり柔軟で豊かな発想力をも持ち得ていた信長ならではのイベントであったと言えるであろう。

photo by Vince Wingate