「令和」元年を迎えて

新しい元号が「令和」に決まり、2019年は令和元年となった。
「令和」の言葉に込められた思いは――
「厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように一人ひとりの日本人が明日への希望とともにそれぞれの花を咲かせることができる、そうした日本でありたい」
――である。

「令和」出典は万葉集第5巻の「梅花の宴」序文である。梅花の宴とは奈良時代の730年、2月中旬に九州の大伴旅人の邸宅で開催された梅見の宴のことである。参加者が庭に咲く梅を題にして詠んだ32首の歌が収められている5巻の序文から「令和」の言葉が導き出された。会に集まったのは旅人を中心とする文芸サロンの人物たちで皆風流を解する知識人であったと言われている。

「梅花の宴」序文からは明るい陽射しが差す天気の良い日に、集まった人達が春の訪れを喜びながら梅を題材に短歌を詠み比べて優雅に過ごしている情景が浮かんでくる。当時の梅は、輸入植物として珍しくて貴重なものであり、貴族の庭にしか無いものであった。そんな貴重な梅を見ながら歌を詠む人達にとって降り注ぐ太陽の光は暖かくて春がそこまで来ていることを感じさせ、心も浮き立つような満ち足りた気持ちだったことだろう。

梅花の宴に参列した人々が、親しく集う中で美しい文化を花開かせたように、令和の時代は日本人が心を寄せ合って新しい時代を切り開いていく明るい時代であることを願いたい。

ところで令和の時代を照らす光はどのような光になるだろうか。明治時代は白熱電球、昭和の時代は蛍光灯、そして平成時代はLED、と私達人間はより便利な光を手にしながら歩んできた。令和時代にはより便利な光が登場して私達の暮らしを彩ってくれることだろう。現在では光に関する研究も進み、人間の精神、健康、行動に深く光が関わることが分かっている。光の性質を知って光の持つ可能性、素晴らしさを私達人間が本当に享受し始めるのことができるのはこの令和の時代からかもしれない。

私達照明デザイナーも使命感を持って「令和の時代」をより質の高い「光の時代」とするべく努めてゆきたいと考える。