【アワーシリーズ】薄明光線

今にも空から何かが降りて来そうな神秘的な景色、天使のはしごとも称される薄明光線(はくめいこうせん)。
以前の記事でもこの現象が文化にもたらした影響を書いた。
光芒

薄明光線とは、太陽光が雲に遮られ、光のカーテンのように見える現象である。大気中の微粒子(エアロゾル)によって雲から出た光が拡散されることにより発生する。雨上がりなど大気中に水分が多い状態で、太陽の低い日の入り前や日の出後が発生しやすい。
光線が地表に対し垂直に差す昼間の光では放射状には見えないことがわかっている。
発生してから消えるまで非常にわずかな時間しかなく、非常に儚い現象といえる。

薄明光線は光芒(こうぼう)とも呼ばれている。余談ながら写真にも光芒という概念があり、強い光源を撮影したときに、光が束になって放射線状に伸びて見える現象のことを指す。
英語では「クレパスキュラー・レイズ(crepuscular rays)」「ゴッド・レイズ(God rays)」「エンジェルズ・ラダー(Angel’s ladder)」など呼び名が多く、それだけあまねく多くの人を惹きつけていることがわかる。 またヨーロッパではこの現象のことを「太陽が水を汲んでいる」と表現したらしい。確かに、次の雨に備えてか光源が水をくみ上げているような印象もあるかもしれない。

「ルナ・レイズ(Lunar rays)」という月による薄明光線も存在する。
満月に近い状態で、水蒸気やエアロゾルの量が適正だと出現することがあるようだ。

多くの呼び名や逸話のある薄明光線。
特に少しずつ乾燥し始める、空気の澄んだ秋から冬に見られることが多く、
11月は見る機会に恵まれることもあるかもしれない。
自分であればどのように名付けるだろうかと想像しながら季節の変わり目を過ごすのはいかがだろうか。