「光の世紀」に向けて4 – 人工光利用型植物工場

完全人工型植物工場は人工光のみを利用し、温度、二酸化炭素、培養液環境などの環境条件を完全に人工的にコントロールする施設であり、主に葉菜類、苗生産に向いている。

人工型の施設では、人工光による光環境のため完全な周年安定生産が可能で完全無農薬栽培が実現できる。また、栽培場所も選ぶ必要がなく、栽培形式も多段式栽培により空間の有効利用が可能である。さらに光のスペクトルを調整することで高付加価値の作物の栽培が可能であり、カリウムを減らしたレタスなど通常の栽培では期待できない栄養素の調整も行われている。

照射する光源は、2000年ごろまでは高圧ナトリウムランプが主であったが、その後2010年までは蛍光灯が主流となり、現在ではLEDが主流になってきている。
植物の重量や栄養成分、食感は光合成(特にクロロフィルの働き)により決定される。光合成は波長450nm(青色)と660nm(赤色)付近の光を好んで吸収していることが解明されている。人工型植物工場では、この光合成に最も必要な赤色光と形態形成に最も必要な青色光を照射して栽培している所が多い。
また、植物の葉のやわらかさや栄養成分は照射する光の波長や含有率により調整可能である。カリウムを減少させたり葉をやわらかくしてフレッシュ感をもたせたり、ポリフェノールやアントシアニン、ビタミンCを増加させることも可能になっている。様々な栽培条件や野菜の種類によってどの波長が最適で、どのような付加価値を与えられるのかなどについてはまだ分からないことも多く、研究が進められている。

また、人工型施設の課題として栽培可能な品種が限定され、生産コストが高いなどの点があり、コストダウンとマーケティングが特に重要になっている。コストの面ではLEDの急速な普及により大きく改善されてきており、将来的にはAI制御やロボットの導入が想定され、さらなるコストダウンが見込まれている。今後いちごなどの果菜類の栽培も期待され、都市にも設置可能な施設としてニーズは高まっていくことと思われる。