脱炭素社会の実現に向けて8─建築関連分野の地球温暖化対策

【該当項目】SDGsの各項目について照明分野からの働きかけ
③健康的な生活を実現する照明計画
④学びに相応しい光環境
⑤女性の活躍が輝く職場の照明
⑦省エネルギーな照明計画⑫地球にやさしい光環境
⑬エコロジーな照明計画

建築に関係する二酸化炭素排出量は世界の二酸化炭素排出量・日本の二酸化炭素の総排出量どちらにおいても約30%を占めており、低炭素社会に向けて建築の果たす役割は非常に大きい。今回は日本の建築関連分野の低炭素社会に向けた動きをみてみる。

日本の省エネルギー政策としての「省エネ法」は1979年に制定され、その後段階的に改正が行われてきた。2019年5月に制定された建築物省エネ法の改正では、温室効果ガス排出量の削減目標達成に向けて、住宅・建築分野に課せられた目標をクリアする方策に着手する方向性が示されている。

日本建築学会をはじめとする建築関連5団体は、2000年に「地球環境・建築憲章」を策定し、持続可能な循環型社会の実現に向かって取り組むことを宣言した。地球温暖化問題の解決にはエネルギー・資源問題や人口問題、そして生活様式が深く関わるため、これらの視点に基づく持続可能な社会の構築が大前提となる。そこで建築関連17団体は2009年に建築関連分野の地球温暖化対策ビジョンを作成した。

その提言は「建築関連分野の地球温暖化対策ビジョン2050―カーボンニュートラル化を目指して―」であり、2050年までに、既存ストックも含めた建築分野全体としてカーボンニュートラル化を実現することを目標として、具体的な方策の概要を示した。2050年を目標とする中、長期にわたる建築や都市、地域のより明確なビジョンを模索し、地球温暖化対策として具体的な方法論を提示し、建築に関わる全ての人々と共有し、低炭素社会の実現に向け建築や都市、地域のカーボンニュートラル化と共に取り組む姿勢を表した意義ある提言であった。

この提言をきっかけとして国、自治体、市民にむけて低炭素社会の実現に向けた情報の発信、提言等を行うことを目的とした「低炭素推進会議」が18の建築関連団体により2014年に設立され活動を続けている。その後、提言を実現するために取り組むべき行動計画「地球温暖化対策アクションプラン2050-建築関連分野のカーボン・ニュートラル化への道筋―」が提言としてまとめられている。

2011年には東日本大震災が起き、多くの人がエネルギー問題や社会全体への関心を強く持つようになった。2012年には「エコまち法」・「低炭素建築物認定制度」が制定され、建築を取り巻く都市、地域や社会までも含めたカーボン・ニュートラル化を推進する動きが生まれた。

2015年9月にSDGsが国連で採択され、11月開催のCOP21においては各国の二酸化炭素削減目標が示され、気候変動に関する意識が世界的に高まった。

2017年に環境学委員会、土木工学、建築学委員会合同でまとめた「低炭素・健康なライフスタイルと都市・建築への道筋」の提言では、低炭素社会の実現は、省エネの方策などにとどまらず、健康で質の高い生活を目指し、かつ低炭素で環境性能の高い都市・建築を実現することであり、低炭素で健康な社会システムの構築が必要だとしている。

人間が豊かで幸福な生活を営めるような低炭素で健康的な建築空間の実現に、照明分野からどんな働きかけができるのかを考察し提案したい。