脱炭素社会の実現に向けて9─建築環境評価ツール

【該当項目】SDGsの各項目について照明分野からの働きかけ
③健康的な生活を実現する照明計画
④学びに相応しい光環境
⑤女性の活躍が輝く職場の照明計画
⑦省エネな照明計画
⑧ストレスフリーな光環境
⑨スマートシティに対応した照明計画
⑩豊かな感性を育む光
⑪街に光で安全
⑫地球にやさしい光環境
⑬エコロジーな照明計画

先進国の人間は生活時間のほとんどを室内で過ごすと言われており、建物の室内環境は人間のサスティビリティに深く関係する重要な要素となっている。今回は低炭素社会に向けた建築物の建築環境評価システムについて取り上げる。

2001年に国土交通省が主導し、(財)建築環境・省エネルギー機構内の委員会により開発された建築物の環境性能評価システム「CASBEE」が創設された。

省資源、省エネルギーなどの「環境負荷削減」や「クオリティー向上」そして周辺環境とのマッチングを含めた総合評価となっており、その後も改良を重ね、現在ではCASBEE-ヒートアイランド、CASBEE-ウェルネスオフィスなどの評価ツールが開発されている。

2012年には都市の低炭素化の促進に関する法律施行規則である「エコまち法」が制定された。この法は、東日本大震災を契機とするエネルギー需給の変化や国民のエネルギー利用・地球温暖化問題に関する意識の高まりを受けて、特に多くの二酸化炭素が排出される地域である「都市」における低炭素化を促進するために制定されたものである。

エコまち法では低炭素建築物として認定されるためには、外皮性能の省エネルギー基準への適合に加え、一次エネルギー消費量が省エネルギー基準よりも10%削減できること、低炭素化対策を採用していることなどが必要とされている。照明については昼光利用制御の採用、高効率照明の採用などを推奨している。

米国グリーンビルディング協会が開発した「LEED」は、1998年からの試行を経て2000年に格付けシステムが制定された建築や都市環境の環境性能評価システムである。LEED認証を受けるには、グリーンビルディングとして備えるべきいくつかの必須条件を満たし、選択項目のポイントを選んで取得することが必要となっている。

2020年7月現在、世界での認証物件数は約86000件であり、日本では149件となっている。※1

2014年に健康や快適性に焦点を当てた世界初の建築・室内環境評価システムとして創設されたのが「WELL認証」である。 WELL認証はLEEDと相乗効果を持つ認証制度として推進されており、環境工学のみならず医学の見地から検証が加えられている。

2020年12月時点で世界の認定件数は374件、日本では9件となっている。未認証段階である世界の登録件数は約12000件、日本の認証登録件数は約30件に上っており、WELL認証の認証登録件数は年々増加している。※2

主な建築環境評価ツールを上げてきたが、これらの評価に加えてSDGsに関連して気候変動問題を含みつつ幅広くサスティナブルにクオリティーを向上させる姿勢を掲げる企業が多数生まれている。

不動産そのものの環境負荷の低減だけでなく、執務環境の改善、知的生産性の向上、優秀な人材確保などの観点から、働く人の健康性、快適性などに優れた不動産への注目が高まっている。

ESG投資においてもこれらの評価指標、SDGs貢献姿勢などが重要な要素となってきており、低炭素社会へ向けた取り組みが世界的にも強く求められるようになっている。

企業にとり建築物やオフィスに関してその資産価値にも関係し、従業員の健康や生産性にも大きな影響を与える室内環境について今後ますますその重要性が認知されていくことだろう。

※1 LEEDとは. 一般社団法人グリーンビルディングジャパン. https://www.gbj.or.jp/leed/about_leed/
※2 WELLとは. 一般社団法人グリーンビルディングジャパン. https://www.gbj.or.jp/well/about_well/