脱炭素社会の実現に向けて11─バイオフィリックデザイン(1)


【該当項目】SDGsの各項目について照明分野からの働きかけ
③健康的な生活を実現する照明計画
⑧ストレスフリーな職場の照明
⑩豊かな感性を育む光
⑬エコロジーな照明計画
 
 
バイオフィリックデザインとは、人間は自然を好み、自然と繋がりたい本能的欲求があるという考え方に基づいて自然をデザインに組み込んだものである。人間の心と体の健康を実現するデザインとして近年、世界の建築家やデザイナーの間で関心を集めている。

その背景には、多くの人間の生活が自然と離れた都市生活となっていることがあげられる。
国連は2008年に世界の都市人口が農村部の人口を初めて上回ったことを報告し、2030年までには世界人口の約60%が都市に暮らすようになると予測している。

都市化の進行と共にストレスの増加、優秀な人材確保競争の激化、職場の良好な環境創出の必要性、などが世界的にも問題となっておりバイオフィリックデザインの導入はこれらの問題の解決に効果を発揮することができるとされている。

脱炭素社会の実現に関して建築物は、省エネなど環境への責任や持続可能な資源の効率的な使用などが重要となる。それと共に建築空間においては人間が幸福感を感じながら快適性、生産性を高めることで作業時間を減らし、健康的な生活を営めることも重要な要素となってくる。それには働く人の疲労感やストレスを軽減し、生産性を高めて作業時間を減少させ、幸福感と健康度を上げるような環境が必要である。

また日本では働き方改革が叫ばれる昨今、各企業にとって残業削減や生産性向上を目指し、従業員にとって快適な職場環境を整えることが重要となっている。

バイオフィリックデザインを取り入れた空間は、離職率の低下、体調不良による欠勤率の低下、プレテンティーズムの減少、などが望めることが分かっている¹⁾。作業の生産性を上げることは作業時間を短縮し、残業の減少にも繋がり省エネにも貢献できる。

自然を取り入れて気力を回復させ、生産性を高めて快適な建築空間を実現できるバイオフィリックデザインについて2回に分けて取り上げる。
 
 
※1 健康経営オフィスレポート. 経済環境省. https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/