江戸時代の生活と光14─浮世絵に見る光の表現法[星]


月を描いた浮世絵に比べてを描いた浮世絵は少なく、星の表現に工夫がみられる。

この作品は、葛飾北斎「仮名手本忠臣蔵 十段目」である。

「仮名手本忠臣蔵」シリーズの各場面のうち十段目を描いたものである。夜空の星は大小大きさの異なる形とし、また帯状に配置することで星座を意識したような表現となっている。

この作品は 歌川広重「名所江戸百景 永代橋佃しま」である。

「名所江戸百景」は広重晩年の大胆で奇抜な構図が特徴の江戸名所絵の一大連作である。
永代橋は当時の隅田川にかかる江戸で最も長い橋だった。漁り火が水面にゆらゆらと映り、海や 夜空をぼかしの技法でグラデーションを出して表現している。星はほぼ同じ大きさで空に一様ではなくまばらに配置している。

この作品は 歌川国芳「東都名所 両国柳ばし」である。

「東都名所」は国芳の風景画揃物作品を代表するシリーズで柳橋は神田川が隅田川に合流する辺り一帯 である。夜空の雲や柳の影、暗闇に包まれた対岸の景色をぼかしの技法で表現し、西洋画を意識した工夫が見られる。星は夜空にちりばめたように配置し、色を雲の上下で白い色と黄色い色とに分けて表現している。当時は星を白い色で表現することが一般的であったため珍しい表現である。

この作品は 歌川広景「江戸名所道戯尽 三十六 浅草駒形堂」である。

夜に餅つきをしている情景である。夜空に広がる星の形を丸や放射状や星印のように様々な形に描いており、一様ではない星の輝きを形を工夫して表現している。

星は大きさや輝きや色が異なるため、絵に表現することは困難だったと想像するが、上に挙げた作品に見られるように浮世絵師によってそれぞれに星の表現法に工夫を凝らしていたことが伺える。

参考資料:太田記念美術館 https://otakinen-museum.note.jp/n/n19544848f71a