江戸時代の生活と光4-3─光との関わり方(月見など)


江戸時代の人々が闇の中で楽しんだ光に関する事柄を挙げてみる。

「月見」は古来から日本人が楽しんできた秋の風物詩である。月見が秋のイベントとして一般庶民にまで広まったのは江戸時代のことで、江戸近郊の“月見の名所”には大勢の人々が集まり月見を楽しんだ。また、平安貴族たちが舟を浮かべて月見を楽しんだように、江戸っ子たちの間では隅田川に船を浮かべて月を眺めることが“たまのぜいたくな遊び”として流行した。※1

江戸時代の夏の楽しみの一つにゆっくりと宙を舞う蛍の光を目印に行う「蛍狩り」があった。江戸時代の江戸にはまだ蛍が飛んでおり、谷中の蛍沢(現東京都台東区)や王子飛鳥山(現東京都北区)などは蛍の名所と言われていた。夏の夕暮れになると大人も子供もほうきの先のようにした笹の葉や団扇などで蛍を捕まえ、蛍籠に入れて持ち帰って楽しんだ。※2

また、「切組灯籠」というおもちゃ絵遊びがあり、苦心して組み立てた紙の立体作品を夕涼みの軒先に飾り、ろうそくで灯籠のようにライトアップして道行く人々に見せて競うものであった。立版古(たてばんこ)とも言う。※3

室町時代ごろ御所などにお盆の供養に飾られた紙細工の灯籠が、次第に庶民に広まり、江戸時代中頃に玩具化して切組灯籠となったと言われている。
1~5枚ほどの錦絵版画を切り抜いて立体的に組み立てたものを歌舞伎舞台を模した箱に入れ、ろうそくの光を当ててその出来映えを楽しんだ。作品は歌舞伎の名場面や歴史物語、風景などを題材としたもので光を当てることで光と影が生まれ、より臨場感のある作品となった。切組灯籠の作者は、絵師としての腕前だけではなく、限られた紙面の中に要領よく絵を割り付ける科学的な発想力も必要であった。

江戸時代の人々の生活は、夜は明るいあかりの無い闇に包まれていたが、その中で光に関わる様々な楽しみを見つけて過ごしていた。

※1 月見 
https://edo-g.com/blog/2016/09/otsukimi.html
※2 蛍狩り 
https://edo-g.com/blog/2016/06/summer.html/5
※3 立版古 
http://tatebanko.com/about/