江戸時代の生活と光8─あかり(4)


江戸時代には、天井型、壁付型、据え置き型、携帯型など現代のあかりの種類に相当するものが出そろい、人々はそれらを組み合わせて日々の生活を送っていた。

前出した瓦灯や行灯などに加え、どのようなものがあったのかいくつかご紹介する。

現代の天井型照明器具に当たるものに、「八間(はちけん)」がある。天井から反射・散光用の笠を吊り、その下に油皿を吊るした灯具で八間四方を照らせるという意味で八間という名前であった。

笠は木の枠で組んだものに紙を貼ってあり、小さいもので一辺が約60センチ、大型では約90センチの大きさのものがあった。灯心を浸して点火するもので油皿には菜種油や魚油を入れ、灯心には火が大きく燃えるように木綿布が使われていた。八間は空間全体に光が届くようにされたあかりで、多くの人が集まる料理屋や銭湯、船宿、遊郭などに設置された。

ブラケット型に当たるものには「掛け行灯」があった。家の入口や店先、または柱・廊下などに掛ける行灯である。看板照明として屋号などが描かれたものもあり、シンボル的な利用もされていた。

捕り物の時などに使われた「龕灯(がんどう)」というものは、現代の懐中電灯のようなものである。釣鐘型の枠の中に自由に回転できるろうそくが取り付けられており、どのような角度にしてもろうそくが垂直になるように工夫されており、光が正面だけを照らすように出来ているものである。

また、江戸時代に誕生した歌舞伎は自然光を照明として行われており、芝居小屋には明り採りの窓があって、必要に応じて窓を開閉していた。しかし明るさが充分ではなかったために、役者の顔を良く見えるようにするために「面明り(つらあかり)」というあかりがあった。面明りは黒子が長い柄の先に立てたろうそくで照らし、その人物を浮かび上がらせるものでスポットライトのようなあかりである。非常に古風で味わい深いあかりとして現代の歌舞伎でも使用されている。

さらに江戸時代には現代の街灯の役割を果たすあかりが主に建物の入り口や辻に設置され始めた。

「辻行灯」は台付きの街灯で辻番所(警備隊の詰め所)や街路に設置されていた。遊郭の大門や番所の前には「木灯籠」「石灯籠」が立てられて常夜灯としての灯りが徐々に暮らしに馴染み深いものとなっていった。