日本人と灯り (7) – 和紙の優しく温かい光

日本の灯りは温かく優しい光を私達に投げかけてくれる。今回は和の灯りに使われてきた和紙(美濃和紙)について取り上げる。

和紙は洋紙に比べて繊維が長く薄くても強靭で寿命が比較的長く、独特の風合いをもつ。

古くは平安時代に生まれた明り障子に和紙が使われた。採光を目的とした明り障子には透光性があり、薄くて破れにくい性質の和紙が求められた。そして和紙の中でも薄くて紙面に漉きむらがなく、丈夫な性質をもち、価格も安い美濃紙が最適であった。当時美濃紙は多用途の紙として最も多く普及していたため障子紙に多く利用されるようになり、美濃和紙が明り障子の代表とされるようになった。

美濃和紙の起源は明らかではないが、奈良時代、仏教の普及により盛んになった写経用の紙に使われており、少なくとも1300年以上の歴史があると考えられている。

美濃和紙を使ったものとして有名なものにお盆の時に飾ったり装飾として使う岐阜提灯がある。極限まで薄く漉きあげられた美濃和紙を使用し、火袋には花鳥、風景などの自然を映し出した風情のある美しい絵柄が描かれている。その佇まいは美しく、清涼感や優雅さに満ちた和の灯りである。 また、美濃の障子紙の中には紋書院紙と呼ばれる透かし文様が入ったものがある。鹿子(かのこ)・紗綾形、菊唐草、七宝、亀甲などの文様が紙に漉きこまれており、行灯や燈籠にも用いられた。灯具を囲った和紙に光があたると、和紙の文様の影が浮かび上がり、美しい陰と光による趣のある光景が生まれる。

日本人の繊細な感覚と精巧な技術が生み出した和紙で灯りを楽しむ美しい世界。
現在でも日本の灯りには和紙を使用して製作されるものが多数あり、和紙を通してこそ得られる優しく温かい光は今も人々を魅了し続けている。