日本人と灯り (8) – 和風照明のこれから

―現代における伝統的な和の灯り、和風照明の魅力とは・・・

 

これまで日本人と灯りについての歴史をみてきたが、今回は現代の灯りについてみてみる。するとほとんどの日本の灯りが現代でも使われていることに気づく。当然その使われる目的、用途には変化があるが、伝統的な日本の灯りが日本人の生活に今も深く関わっているといえる。

器具の素材は基本的に昔と同じ素材を使っているものが多い。ただしより機能的に加工したものを使うことによって器具の質を高めている。例えば、行灯型照明器 具の囲いの和紙は耐久性を高めるために加工したり、紙よりも耐久性のある他の素材で和紙の風合いを再現したりしている。

器具デザインは伝統的な和のデザインを基本に、現代の建築空間にマッチしたデザインを幅広く展開し、ニーズに応じた様々な種類のデザインを生んでいる。

近年、和風空間だけでなく、洋風の空間にも和風照明が好んで使われることがある。伝統的な技法による昔ながらの作り方で製作された和風照明を、旅館や料亭だけでなく、理想とする光空間づくりに必要なものとして求める一般の人も多い。
和風照明の光を見ると落ち着いて安堵感を感じたり、陰影のある光に豊かで深い味わいを感じるという日本人が多い。和風の灯りの特徴であるやわらかな光や日本人の心に響く懐かしい雰囲気などが日本人に好まれる理由だろう。ほのかな陰影を生む昔からの日本の和風の 灯り。時代が移り変わって、生活様式、建築空間などが大きく変化してきても日本人が心地よいと感じる灯りの原点は伝統的な日本の灯りの中にこそあるのでは ないだろうか。

日本の灯りは光源が火から電球となり、そして調光調色が可能なLEDへと光の質も変化してきた。光の持つ特徴を熟知したわれわれ照明デザイナーが適切な配光計画を図ることによって光源から放たれる光による豊かな光空間の創造が可能となる。

素材やテキスチャーの良さを失わずに機能面の改良を加えた器具を製作し、現代の建築空間と統制の取れたコラボレーションを実現できる日本の灯りづくり・・・・
それは日本人の豊かな感性に働きかける伝統に基づいた、新しい日本の灯り空間の実現に繋がるものと考える。

 

■写真:『東京アメリカンクラブ』