低炭素社会に向けて2─世界の温暖化の影響(1)

温暖化は世界の平均的な気温の上昇のみならず異常高温(熱波)・大雨・干ばつの増加などの気候の変化を伴い自然生態系や人間社会に大きな影響を与えている。そして水資源や生物活動の変化や農作物の収穫量の減少などの様々な現象が世界の人々の生活に大きな影を落としてきている。※1
 
■気温の上昇
産業革命前に比べて世界の平均気温が2019年で1.1℃上昇するとみられる。※2
21世紀の地球の平均気温は20世紀に比べて温室効果ガスの大幅な削減を行った場合は約0.3~1.7℃、非常に高い温室効果ガス排出量が続いた場合は約2.6~4.8℃上昇する可能性があると指摘されてる。※1
2015年から2019年までの平均気温はそれ以前の平均気温より0.2度上昇しており、このままでは今世紀末には3℃上昇してしまう可能性があると懸念されている。※2

平均気温2℃上昇の場合、洪水の影響を受ける世界の人口は1976-2005年を基準として170%増加し、サンゴ礁の99%以上が消失し海の生態系の不可逆的消失リスクが増大し、昆虫の18%、植物の16%脊椎動物の8%が生息域の半分以上を失うとされる。

■二酸化炭素の排出量増加
2018年の二酸化炭素(CO2)排出量は17年と比べて2%増え、過去最高の約370億トンに達した。2015から2019年の5年間のCO2濃度の上昇率は、2015年までの5年間に比べて20%高くなっている。※2

二酸化炭素は、石炭や石油などの化石燃料の燃焼によって放出される。二酸化炭素は森林などの成長に伴い吸収されるが、森林面積は伐採や森林火災等により減少し続けており、温暖化を加速させる原因になっている。現在大気中に放出される二酸化炭素の2割ほどは森林伐採により生じたものである。

IPCC第5次評価報告書では気温1.5℃の上昇を回避するには、2030年までに二酸化炭素の排出量を半減させ、2050年までにカーボンニュートラルを実現する必要があると述べていた。しかし2019年気候行動サミットの報告では、現在の気候対策のままでは、温室効果ガスは2030年でも頭打ちになる見込みはないと述べている。

 
※1 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書
※2 世界の気候状況に関する報告書