光のパブリックポリシー14―高齢者と照明3


認知症患者は睡眠覚醒障害を起こすことで、情緒も不安定になり、夜間に行動したり介護者にも負担をかけることになる。そのような認知症患者に対して、照明の明るい光が睡眠の質を高め、日常行動を改善することに効果的である報告がある。

オランダで行われたグループケア施設の認知症高齢者に対する認知および非認知機能に対する明るい光の効果を調べた結果である。

認知症高齢者を1年3ヶ月から最長3年半、日中の照度レベルが異なる2群(1000ルクスと300ルクス)に分けて天井の白色蛍光灯の照度を調節し,照射を継続した結果,1000ルクス群が300ルクス群に比較して認知機能の低下とうつ気分の増大が抑制されたことが確認できたという。*1

照明の照度の調整を行うことで認知機能などに対して良い効果を得ることができるのである。

また、「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンは年齢を重ねるとともに分泌量が減ることが明らかになっている。高齢になると朝早く目覚めたり、夜中に何度も目が覚めたり、若い頃より睡眠時間が減るのは、加齢により体内時計の調節機能が弱まっているためと考えられている。

一般的な高齢者施設においてのサーカディアンリズムに沿った照明システムによる効果が報告されている。施設内の照明を自然光に準じた光で制御したところ、入居者の睡眠時間が12.%増加し、それに準じて介護スタッフが横になる時間が46分増加したという。*2

サーカディアンリズムを考慮した光や、照度の調整可能な照明システムは、高齢者及び認知症高齢者の生活を安定化し、介護者の労力削減にも貢献できるため、効果的に利用することを推奨したい。

■参考資料
*1 https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/18544724?click_by=p_ref
*2 https://news.panasonic.com/jp/press/data/2020/01/jn200109-1/jn200109-1.pdf