光のパブリックポリシー7 夜間景観照明4


近年、新しい夜間景観照明の役割が生まれている。それは光のメッセージとしての役割である。

メッセージとしての景観照明は、コロナ禍において医療従事者に感謝を表す「青い光のライトアップ」や、ウクライナへの軍事進攻の犠牲者を悼み、国際平和を願う「青と黄のライトアップ」などに見ることができる。

青色のライトアップは、自らをリスクにさらしながら最前線でコロナウイルス感染症と戦う医療従事者に対して、感謝の気持ちを伝えようとイギリスではじまったもので世界中に拡大した。青色の由来はイギリスの国営医療サービスであるNHS(National Health Service)のシンボルカラーがブルーであることにちなんでいる。*1

日本で青色ライトアップを行った場所を挙げると、大阪万博記念公園の太陽の塔、大阪城天守閣、東京都庁、東京タワー、通天閣、千葉ポートタワー、ディズニーランドシンデレラ城、熊本城、彦根城、等々日本全国各地にわたっている。

ホテルオークラ神戸では、客室の照明を利用して建物にHOPE、ファイトなどの文字を描いてメッセージを伝えた。

青と黄のライトアップはロシアのウクライナへの軍事侵攻で犠牲になった両国民に哀悼の意を表し、国際平和を願うもので世界各地で行われている。青と黄の色はウクライナの国旗の色である。日本で青と黄のライトアップを行った場所は、上記に挙げた施設の他に松本城、スカイツリー、横浜市庁舎など多数あり、光でメッセージを送っている。

メッセージとしてのライトアップは、見る人達に届けたい強い思いが基盤となり発信するもので、広範囲に見る人へのメッセージを届けることが出来る。そして見る人からの共感の輪が広がることで、新しい情報の共有を速く広く行うことが出来る。

また、ライトアップは情報インフラとしての大きな可能性も持っている。日常においては天気予報を光で伝達したり、災害時においては光でアラートを送ったり、災害弱者のいる世帯で救急養護の光を出すなど、光が住民の貴重な情報伝達の手段となる可能性を秘めているのである。*2

建築物や風景の単なるライトアップという機能だけに留まらず、広い範囲に素早く情報を送ることができる情報インフラとしての機能まで包括することが可能である夜間景観照明。

地域住民の日々の暮らしを支える光としてだけでなく、重要な情報を届ける手段の光として、今後もますます社会における夜間景観照明の価値や意義は評価されていくことが予想される。照明デザイナーは、情報インフラとしての光の機能を熟知しつつ、その可能性を広げるべく夜間景観照明の計画を行うことで、質の高い光環境を構築すると共に社会生活に大きく貢献することができると考える。

■参考文献
*1 https://www.nvcb.or.jp/3380
*2 https://www.colorkinetics.co.jp/news/1024
Colorkinetics catalog