光のパブリックポリシー9 災害時の避難所の照明2


災害時の避難所において避難所空間の質の向上を図ることは、避難者の健康を守り、その後の生活再建への活力を生み出す基盤をつくることに繋がる。その中で照明は、被災者達の生活を支え、安心で安全で健康的な生活を送るために重要な要素としての役割を担っている。

避難所での災害医療体制の各局面についてみながら照明について考察してみる。

・発災直後(~6時間)から超急性期(72時間)
救命救急・外傷治療が重要で、その活動を支える照明が必要である。

・急性期(~1週間)亜急性期(~1か月)
睡眠障害などにより慢性疾患が生じやすく、感染症の予防などの公衆衛生的な医療なニーズや、慢性疾患への対応が重要となり、睡眠を阻害しないような照明の工夫や、安全の確保にも関連した適切な照明環境が求められる。

・慢性期(~3か月)以降
避難者の健康管理・メンタルケア、健康的生活の再建が必要になってくる。精神的なストレスも問題化してくる時期のため、避難所環境全体の改善が必要とされる。照明においては健康に留意した光環境の構築が重要となる。*1

健康に留意した照明としては、サーカディアンリズムに沿った光の色(色温度)に設定できるように調色機能を有した器具が求められる。避難所空間が調色機能によりサーカディアンリズムを妨げない光環境であることは、生活者の健康に大きく寄与することとなる。調色機能は、非常時には避難所での生活をより快適な光環境とすることができ、平時の際には多様な活動内容に応じた色温度での空間演出が可能となる。

避難所では、夜間に就寝中に見回りや物質搬入の行為などが行われるため、必要なところのみ点灯可能なシステムであることが理想的である。そのためには、非常時の使用を考慮した配灯、回路設計や、個別制御が可能なシステムによる細かい調光が望ましい。

また、避難所生活が長引くと健康を害する人が増えるため、健康管理の重要性が増してくる。演色性が高い照明器具であれば健康観察における顔色の判断がより正確となり、長期の避難所生活の光環境として望ましいものとなる。

避難所となる可能性のある公共施設や学校などは、有事の際を想定した照明計画が必要である。どのような光環境を実現したいかに応じて的確な照明システムや照明器具を選定し計画することは照明デザイナーの重要な社会的使命のひとつであると考える。

■参考文献
*1  https://www.gs-yuasa.com/en/technology/technical_report/pdf/vol16_2/016_02_001.pdf