視覚と光1─序章

人間の五感は視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚であるが、そのうち視覚から得る情報が約8割であると言われおり視覚は重要な役割を担っている。視覚により物を見るということは光が目の水晶体を通って網膜に達し、視神経を通じて脳に信号が送られ、脳が像を作り上げていることによる。光エネルギーが網膜上の感覚細胞に対する刺激となって生じる感覚が視覚である。

視覚によって物体の色、形、運動、テキスチャなどの情報や空間的な情報などを得ることができる。さらに自己の運動に関する情報も得られ、視覚により光情報をもとに外界の構造を推定することが可能となっているのである。

視覚は私達人間にとって非常に重要であり、視覚に深く関係する照明の光については視覚特性に応じた最適な光を提供することが望まれる。

現代社会においては視覚的な情報手段は多岐にわたり、また技術革新によって生まれた新しい方法での情報伝達も進み、私達の視覚を取り巻く状況は大きな変化をみせており、視環境の整備の重要性は増していると言えるだろう。

今回より視覚と光について取り上げ、その視覚特性を考慮した視環境の在り方などについて考えてみたい。そして今一度視覚特性を見つめなおし、科学的な面や心理的な面からその特性を解明しながら視覚と光について考察することでこれからの持続可能な社会を実現するための照明の光への問題提起となればと考える。