視覚と光6─フルスペクトル照明の光

私達人間は、昔から自然光である太陽光のもとで生活をし、太陽光の恩恵を受けて生きてきた。しかし、現代の都会では人工照明の下での活動が一日のうちほとんどとなっている人々がほとんどである。人工照明の光は太陽光に比べてスペクトル特定成分が欠けていたり、アンバランスであったりして体の機能が生理的、感情的、知的に衰えてしまう原因になっているのではないかと言われている。

多様されている一般的な蛍光灯は太陽光に比べて青紫色、赤色の波長が不足している。そしてその光は人間にストレスを与える光になっている。
自然光である太陽光とほぼ同じ波長を持つフルスペクトル照明は、色の見え方が自然光のもとでのように見えると共に、人間に対しては様々な好影響を与える照明としての評価が高い。

1973年にジョン・オットは小学生の教室においてフルスペクトル照明が与える効果の実験を行った。クールホワイトの蛍光灯の教室とフルスペクトル照明の教室における子供の行動を調査した。それによるとフルスペクトル照明の教室の子供は成績や態度が改善し、虫歯の数も蛍光灯の教室の子供に比べて1/3少なくなったという。

光と色の影響を調べたものとして1982年に行ったハリー・ウォルファースの実験がある。小学校の教室の照明と壁の色を替えると子供の様子にどんな影響があるかを調べたものである。実験では照明は一般のクールホワイト蛍光灯からフルスペクトル蛍光灯に照明を替え、壁の色はオレンジ色、白、ベージュから薄青色、薄黄色に替えた。壁の色のみ替えた場合、照明と壁両方替えた場合に分けて影響を評価したところ、壁と照明共に替えた教室の子供達に様々な良い影響が見られたと言う。それによるとストレスが減り、病欠者が減少し、学業やIQの向上が大きく見られたという。

また、1983年Chanceは他の蛍光灯に比べてフルスペクトル蛍光灯(約5000K)で運動を6分間行った場合の運動後の心拍数が有意に低いこと酸素摂取量及び脈拍が有意に高くなることを確認した。

フルスペクトルの光が行動、学習、心の状態などに大きな影響を与えるという研究結果は他にも多々報告されている。これらの報告は、太陽光に近いフルスペクトルの光を上手に取り入れることによって私達の行動をより良いものにすることができるという貴重な裏付けと言えるだろう。

フルスペクトル照明が、行動、学習、特定の病状など精神生理学的な機能に与える影響は大きい。これは太陽光と同じように免疫系を刺激し、健康や心の状態や行動や学習を改善できることを示しているからではないだろうか。

現代ではLEDを光源とするフルスペクトル照明器具が研究開発されてきている。その有益性の検証はまだこれからと言えるが、より効果的で健康に寄与するフルスペクトル照明器具の登場を期待したい。