視覚と光10─色覚異常(2)

加齢による色覚異常は水晶体(目のレンズ)が年とともに黄色く変色すること(白内障)や、瞳が小さくなり目に光が入りづらくなること、網膜の視神経の劣化など複合的な要因によって起こる。

高齢の色覚異常者は階段の段差が認識しにくく足を踏み外す危険や、ガスの炎のうち最も高熱である色温度の高い炎の先端の青色が見にくくなり、自分の体と炎との距離を適切にとれずに調理の際に着衣着火を起こしてしまう危険があり注意が必要である。

また小中学校においては平成15年にそれまで行われていた色盲検査の義務がなくなった。そのため本人が色覚異常を認識せずに成長し、進学や就職の際に色覚のトラブルが生じる例が出てきたため、平成26年に文科省が色盲検査の指導強化の通知を出し、現在では検査を実施する学校が多くなってきている。

小学生の場合、黒板の赤いチョークの色が見えなかったり白と区別できない場合があり理解力に影響を与える。青と緑も見にくいため白と黄色のチョークの使用が勧められる。ホワイトボードでは黒、緑、赤のマーカーは見分けが困難なため、青を優先して使用する配慮が必要である。仕切り線の入っていない円グラフが読み取れないなど

信号機はかって青信号は緑色で赤信号や黄信号と見分けがつきにくかったが1970年代以降色弱者に見分けやすい青みどり色に変更されている。

第1色盲では長波長側から可視光線領域が狭くなっているため長波長の赤の高輝度赤LEDの光が見えないため電光掲示板の赤い文字が読めないことがある。
第2色盲では赤、オレンジ、黄色、黄緑のLEDが区別がつかないためこれらの色のLEDを組み合わせても1色にしか見えないという。
青のLEDは色盲の人にはどれも明るく見やすいが、色盲でない人には短波長の青は暗く見える。

赤いレーザーポインターも種類によってはほとんど見えない場合があり、緑のレーザーポインターはどんな色覚特性の人にも見やすい。

色覚異常の人は社会生活を送る上で障害になる事柄を自身の修正力で賄って特に支障もなく生活している人がほとんどであるという。しかし高齢化が進む日本では今後、誰もが暮らしやすい社会を目指してさらに色覚異常の人にも配慮したデザインが求められていくだろう。
2020年には東京オリンピックが開かれ多くの外国人が訪れる。日本人だけでなく色盲の割合が高い欧米人の色盲者にとっても見やすく分かりやすい色使いや配色による掲示板やサイン照明で東京の街を飾ることができれば何よりのおもてなしになるのではないだろうか。