「希望とは、輝く陽の光を受けながら出かけて雨にぬれながら帰ることである。」

ジュール・ルナール(1864~1910)はフランスの小説家、詩人、劇作家。鋭い観察力を持ち、簡素で日常的な言葉を使いながら様々な優れた作品を生み出した。

ルナールはフランスで役人の父親のもとに生まれる。17歳の時にパリに出て高等師範学校を目指すが成績が悪く劇作に興味を持ち始めたために進学を断念。その後詩や小説を書き、25歳の頃からルナールの知名度が上がってくる。36歳の時に彼の作品で最も有名な「にんじん」を発表、その後戯曲化された。1910年46歳で動脈硬化症で死去。

「にんじん」はルナール自身の少年時代をもとに書かれたと言われている。家族から「にんじん」という仇名で呼ばれ、不当な扱いを受けている少年が主人公。押し付けられる雑用、理不尽とも思える母親の怒り、自分に対して冷淡な父親をどうにかやり過ごし、時には皮肉とも言える視点で冷静に物事観察しながら成長していく主人公の様子が書かれている。

希望とは、輝く陽の光を受けながら出かけて雨にぬれながら帰ることである。

輝く光を浴びて順調に事が運ぶと思って意気揚々と進んでいる時ほどそれが順調にいかない場合は落胆が大きい。しかしそんな時こそくじけることなく希望を持って前を向いて歩んでいくことが大切だという意味がこの格言には込められているのではないだろうか。 

希望とは思ったようにいかない状態や困った状態にある時に救いとなるものである。虐待としても捉えられるルナールの少年時代の母親からの様々な仕打ちや家庭内で身の置き所のないような日々。ルナールはそんな苦い経験の中で、きっとそれでも希望を持とうと自分に言い聞かせて過ごしていたのだろう。

私達は時に失望するしかような辛い状況に置かれることがある。そんな時こそ希望を持ってまた輝ける光のもとに立てるように進んでいきたいものである。