「何であろうと、内に輝く光は消せません。」

マヤ・アンジェロウ(1928~2014年)はアメリカ合衆国の作家、詩人、脚本家。その活躍は文筆業にとどまらず、歌手、ダンサー、舞台俳優、ジャーナリストなどとしても活躍しアメリカでは20世紀最も尊敬される人間の一人だと言われている。

アンジェロウはミズーリ―州に生まれた。当時黒人差別の根強い南部では、黒人が公共施設を利用することを禁じる州が多く、ミズーリー州もその一つだった。隔離された黒人だけの社会で育ち、過酷な少女時代を過ごす。

17歳で未婚の母となり、コックやダンサーとして働きながら子供を育て30歳にさしかかった時に文筆活動を開始する。
そして黒人の地位向上を目指す運動に身を投じ、キング牧師らと共に公民権運動の担い手として精力的に活動した。バラク・オバマ元大統領は彼女のことを「我々時代の最も輝かしい光の1つであり、素晴らしい作家であり、友人であり、女性である」と称した。

その生涯において7冊の自叙伝と3冊のエッセイ、詩集を数冊出版した。簡潔でわかりやすく、力強い言葉は時代を超えて受け継がれている。特に51歳で発表した自伝小説「歌え、翔べない鳥たちよ」は彼女の代表作となり現在も人気のある作品となっている。また、多くの名言も残し、彼女の名言から勇気づけられたアメリカ人は多い。

晩年、講演活動を積極的に行い、ウェイク・フォレスト大学でアメリカ史を教えるなどしていたが、86歳の時に自宅で静かに息を引き取った。

何であろうと、内に輝く光は消せません。

アンジェロウは一人の力では国や世界を動かすことができないとしても、一人の人間が発する言葉の持つ力が周囲の人の心の持ち方を変え、ひいては世界をも変える力を持ち得ることを自身の行動で体現してみせた。この格言はそんな彼女の心の底にあった強い勇気と信念はどんなことがあろうと消すことができないという自身の気持ちが表れている格言である。
強い勇気と信念は、彼女の決して平たんではなかった人生の中から生まれた説得力のある言葉として人の心に迫ってくるように思う。自己の持つ強い気持ちを輝き続けさせることは簡単ではないと思うが、決して消さない覚悟で自らの信念を輝かせ続けて生きていく姿にこそ人間の尊厳というものを見ることができるのではないだろうか。
アンジェロウの生き様に、その尊厳を感じるからこそ彼女は広くアメリカ人の尊敬を集めた人物として現在も慕われているのであろう。