「太陽におなりなさい。そうすれば誰もがあなたを仰ぎ見るようになるでしょう。」

フュードル・ドストエフスキー(1821~1881年)はロシアの思想家、小説家である。彼の小説には人間の心の奥底に潜む様々な心理が描かれており、世界文学史上最も偉大な心理学者と言われている。その手法は、「魂のリアリズム」と呼ばれる独特のもので、人間の内面に渦巻く欲望や情念と、キリスト教信仰に基づく人間愛との相克を心理や思想を中心に表現している。彼の小説は、世界の作家や芸術家に大きな影響を与えている。

ドストエフスキーは貧民救済病院の院長の次男としてモスクワに生まれる。9歳の時に父親が領地と100人余りの農奴を抱える小地主となる。13歳の頃からドストエフスキーはロシア内外の文学作品を次々と読破し、将来大作家になることを夢見ていた。

15歳の時に母親が死去し、18歳の時には、領地の農民たちの恨みにより父親が惨殺される事件が起き、ドストエフスキーの心に大きな傷痕を残した。

モスクワの有名な私塾で学び、ペテルブルグの工兵学校を卒業し工兵局に勤めるが、退職して作家を目ざす。23歳で「貧しき人々」を発表して有名になる。

その後革命思想の団体に参加したとして捕らえられ、死刑を宣告される。しかし銃殺刑が執行される直前に刑の執行を容赦されその後10年間シベリア流刑と服役の身となる。この死と直面した恐怖や厳しい流刑の体験は彼の思想に大きな影響を与えた。

18歳で初めて起こしたてんかんの発作は、その後も症状は回復することなく悪化の一途をたどり、他の病気との合併症により59歳で家族に見守られながら息を引き取った。

彼の五大長編と呼ばれる「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」「カラマーゾフの兄弟」の小説は犯罪や事件を展開させながら人間の心が抱える秘密や悲劇性を追求したものとなっている。

太陽におなりなさい。そうすれば誰もがあなたを仰ぎ見るようになるでしょう。

生涯人間の苦悩や複雑な心理について追求していったドストエフスキーにとって空に輝く太陽のような存在は人間にとって絶対的に肯定的な存在であり、全ての源である生命を育む元であり、愛の象徴であったのではないだろうか。

太陽におなりなさいの言葉には太陽のように全ての人に光や暖かさや愛を与える人になり人々に敬られる人になりなさいというトルストイからの心のメッセージが込められているように感じられる。