「世の中は君の理解する以上に栄光に満ちている。」

ギルバート・キース・チェスタトン(1874~1936年)はイギリスの作家、評論家、詩人、随筆家、画家。逆説とユーモアの大家として知られ、〈ブラウン神父〉シリーズに代表される短編推理小説は、コナン・ドイルの作品と並んでアガサ・クリスティーなど後世の作家たちに大きな影響を与えた。また長編小説『木曜の男』などに顕著な独特の幻想性により、現在でも熱狂的な読者を獲得している。

チェスタトンは1874年にロンドンで不動産業、土地測量業を営む家に生まれる。美術を志し美術学校に進むが、やがて文学に興味を持つようになり学校を中退する。その後文筆活動を開始し、政治評論や文芸批評、評伝、小説など幅広い分野で活動した。

26歳の時に詩集で文壇にデビューし、27歳で結婚し、30代になってから長編小説「新ナポレオン奇譚」「木曜の男」などを執筆し、30代後半にはブラウン神父シリーズを執筆する。

ブラウン神父シリーズはチェスタトン独特の逆説と警句が小説の中に遺憾なく生かされた作品である。地味だがどこか憎めない神父がアマチュア探偵として事件を解明していく推理小説で探偵小説の古典とされている。ブラウン神父が解いていく事件には、それぞれ趣向を凝らしたトリックが使用されており、そのトリック創作率は当時の作家の中では群を抜いていた。当時、江戸川乱歩は「チェスタトンのトリック創案率は探偵小説随一」と賞賛している。

48歳の時にイングランド国教会からカトリックに改宗し、その後はキリスト教的歴史観からの批評活動を行った。62歳でこの世を去り、その葬儀はウエストミンスター大聖堂で行われた。

世の中は君の理解する以上に栄光に満ちている。

―不運なことや不都合なことに溢れた世の中。それをひとつひとつ解決して乗り越えていかなくてはならない。人生とはこういうものであるのか、と諦めに似た思いに囚われることがあるかもしれない。しかし、視野を広げて世界を見てみよう。空には輝く太陽、眩しいまでに白い雲が、そして地に目を移すと生命力にあふれた草木の緑、美しく咲く花が見え、それぞれが輝きを放っていることに気がつくだろう。そして、あなたが生きている世界はまだまだ大きな可能性を秘めていることに気がつくだろう―
平々凡々とした際限もなく繰り返される日常の瑣末事にこそ、無限に我々の心を躍らせる驚異と冒険があるという認識を持っていたチェスタトン。この格言は、日常にこそ光輝く未来に繋がる事が溢れているのである、ということを私達に気づかせてくれるチェスタトンからのメッセージである。