「悲しみは瞬時の暗闇を通って灯りから灯りへ架ける覆われた橋にすぎない。」

ヘンリー・ワーズワース・ロングフェロー(1807~1882年)はアメリカ合衆国の詩人。ヨーロッパ文学をアメリカに紹介するとともに、アメリカの土壌に根ざした数多くの詩を書いた。彼の詩の影響は文学界のみならず歴史、政治、音楽などの分野にまで影響を与えた。

ロングフェローは1807年にアメリカ合衆国のメイン州で弁護士の父のもとに生まれた。14歳でボウディン大学に入学し卒業後は教授となる。24歳で結婚するが2年後に妻を亡くす。後にハーバード大で教鞭をとりながら著述活動を続ける。37歳で再婚し、6人の子供に恵まれ幸せな家庭生活を送る。しかし、54歳の時に、妻が事故で焼死するという悲しみに襲われる。彼はこの事件で深く傷心したが、その気持ちを追い払うようにダンテの神曲の翻訳に打ち込んだという。その後も数々の作品を生み出し、75歳で腹膜炎によりその生涯を閉じた。その2年後にはロンドンのウェストミンスター寺院の詩人のコーナーにアメリカ人の詩人として初めて彼の胸像が設置された。

悲しみは瞬時の暗闇を通って灯りから灯りへ架ける覆われた橋にすぎない。

―悲しみは人生で出会う希望や幸福という灯りから灯りをつなぐ橋渡しをするつかの間の暗闇である―
悲しみに沈むことなく、希望に向かって歩みを進めていこう、というこの格言は、私達に励ましを与えてくれる格言であるが、妻が焼死するという辛い経験によって悲しみに深く沈んだロングフェローが自らに語りかけた励ましの言葉にも思えてくる。