「人生から太陽が消えたからといって泣いてしまえば、その涙で星が見えなくなってしまう。」

ラビンドラナート・タゴール(1961~1941年)は、インドの詩人、思想家。音楽、戯曲、小説、絵画、思想、哲学などあらゆる方面で優れた才能を発揮した。アジアで初めてノーベル文学賞を受賞し、その深い智恵と精神性は、多くの人に多大な影響を与えた。また、彼が作曲した2600曲に及ぶ「タゴールソング」と総称される歌の数々は、大宇宙のリズムを音楽としたものであると言われ、今もベンガル地方の人々に深く愛されている。

タゴールは1961年にベンガル州で裕福な豪商の家に14人兄弟の末っ子として生まれた。自然を愛し、美しい言葉に敏感な子供であったが、当時のイギリス流の厳格な小学校の教育に馴染めず、3回転校してどの小学校も退学している。しかし、父や宗教家、哲学者、音楽家、数学者であった兄弟達から教育を受け、豊かな教養を身につけ才能を開花させていった。そして8歳で抒情詩を作り、16歳の時にはイギリスに留学し見聞を広め、22歳で結婚する。

40歳の時には自然の中での教育を目指した学校を設立した。この大学は後に国立大学となる。48歳で詩集「ギタンジャリ」(歌の捧げものの意)を刊行し、高い評価を受けた。翌年、アジア人としては初めてノーベル文学賞を受賞する。

彼は人間の中にある生命というものは大いなる神の一部であるという考えを持っており、現実の中で自分の人生を十分に生きることによって神に近づこうとした。50代後半からは世界文化の協調愛を唱えて歩き、1940年に80歳でこの世を去った。

人生から太陽が消えたからといって泣いてしまえば、その涙で星が見えなくなってしまう。

―人は人生において様々な悲しみや苦しみや絶望を味わうことがある。そんな時、もう太陽のように明るく輝いていた希望が失われたと落胆して泣いてしまうことはしたくない。まだ残されている遠く光り輝く星のような希望の光を見ることができなくなってしまうから。―
人間の命の中に宇宙に連なる神の存在を見ていたタゴール。彼の80年の生涯は民族と国境を越えた人間への愛を歌い、さらに時空を越えた遙かな永遠をひたすら求め続けた心の旅であったといえるだろう。