「ランプの灯りを大きくしてくれ。暗闇の中を通って家に帰りたくない。」

オー・ヘンリー(1862~1910年)は、アメリカの小説家。作品はユーモアとペーソスに満ちた巧妙なすじと意外な結末をもったものが多く、生涯に227の作品と13編の作品集を残した。

オー・ヘンリーは、1862年アメリカのノースカロライナ州に医師の息子として生まれる。母親が3歳で亡くなり、父親は家業を顧みなくなったために15歳から叔父のもとで暮らす。20歳の時に、知人に誘われてテキサス州に移り住み、様々な職業に就いて過ごし、24歳で結婚する。そのころから文筆活動に憧れて32歳の時に風刺週刊誌を刊行するが翌年廃刊となってしまう。

34歳の時に2年前に勤めていた銀行から横領罪で告訴される。ヘンリーは病気の妻と娘を残して逃亡し放浪するが、妻の危篤の知らせを受けて家に戻る。保釈金を納めて妻の看病に勤しむが数か月で先立たれる。翌年から5年の刑を受ける。服役中に短編小説を書き始め、出獄後はニューヨークで作家活動に入る。その後彼の作品は一躍注目を集めるものとなり彼は多くの作品を発表し出版して活躍した。しかし過度の飲酒が原因で病気になり48歳で永眠した。

ヘンリーの作品は人間の本能的な善性に対する彼の信頼が表現されており、彼が人間を愛していることが感じられて心が温かくなる。

ランプの灯りを大きくしてくれ。暗闇の中を通って家に帰りたくない。

この格言は、ヘンリーの最後の言葉だと言われている。彼にとって家に帰る道は暗闇に包まれていたのかもしれない。横領の罪や妻の看病を満足にできなかった想いなど彼が抱えていた心の重荷は大きかったのだろうか。ランプの光を大きくすることで心の闇が照らされ、少しでも彼の心が救われたことを願いたいものである。