「愛されることは、燃え続けることでしかない。愛することは、暗い夜にともされたランプの美しい光だ。愛されることは消えることだが、愛することは永い持続だ。」

ライナー・マリア・リルケ(1875~1926年)は、オーストリアの詩人、作家。プラハに生まれ10代から詩を書き始める。プラハ大学、ミュンヘン大学などに学び、詩、散文、など多数執筆する。

26歳の時にロシアに旅行することで精神的に大きな影響を受け、独自の言語表現を生み出す。27歳の時に彫刻家ロダンと出会い、彼の孤独な芸術観に影響を受けた。ロダンの影響を受けて対象を主観的ではなく、その本来の姿を純粋に捉えて表現する独特の詩的表現をするようになり、その詩は「事物詩」と称されるようになった。

またリルケは「ロダン論」を著した。その中で、ロダンの彫刻における光の効果について以下のように述べている。
「ロダンの彫刻は、光が彫像の面上で自然に当たるというような受容的な面作りではなく、ロダンの多面的な造形が「光を征服」して、その結果「空間を獲得する」ことができるのである。「光」の作用が、芸術作品の独立性を高めるための一つの新たな要因となっている。」

リルケはロダンの芸術に傾倒し、ロダンへの尊敬の念は終生変わることがなかったと言う。

晩年、リルケはスイスに居を構え、多くの名作を記したが51歳の時にバラのとげに刺された傷がもとで急性白血病に冒されてこの世を去った。

愛されることは、燃え続けることでしかない。愛することは、暗い夜にともされたランプの美しい光だ。愛されることは消えることだが、愛することは永い持続だ。

―愛されることは相手から与えられた火を燃やし続けることである。与えられた火はいつか燃えつきて消えてしまうかもしれない。愛することは暗い夜道を照らすランプの光のように闇の中の不安を取り除き、暖かく美しい光を投げかけることである。その愛は自分自身が光続け、燃え続けることで叶うことだろう。―

リルケは日本の北斎の浮世絵に感銘を受け、俳句にも興味をもっていたという。彼が広く芸術への深い造詣をもっていたことは芸術観や美術関係の書簡も多く著したことからも伺える。リルケは亡くなる日まで辛い病状の中、生の望みと死の予感に揺れ動きながら生と死の超克の道筋を詩の中に探り続けたという。最後まで生を輝かせた詩人だったと言えるだろう。