「顔の輝かない人は決して星になることがない。」

ウィリアム・ブレイク(1775~1827年)はイギリスの詩人、版画家で英国ロマン主義の先駆者と言われている。版画や水彩画を中心に宇宙的ビジョンを展開し、絵と文字の総合的幻想芸術家を目指した。

生存中はその特異な作風のために狂人とすら見なされて美術界や文学界から無視されていた。しかし没後に作品の哲学的で神秘的な表現や想像力が再発見され、高い評価を受けると共に多くの芸術家に影響を与え、現在では「イギリスが生んだ遥かなる最大の芸術家」と評されている。

ブレイクは1775年ロンドンで靴商人の家に生まれた。15歳の時に銅版画家のもとに弟子入りし、その後銅版画制作を職業に選び生計をたてた。31歳の時に新しいレリーフ・エッチングの方法を発明し、その手法を応用した彩色印刷により詩とイメージの融合を実現することを可能とした。

その後は自身の版画店を開店し、代表作である「無垢の歌」などの詩画集を次々に出版し独自の芸術理念を追求していった。

また、ブレイクには本人が「ビジョン」と呼ぶ幻視の能力があり、その能力を使って聖書などの独自解釈の挿絵を制作し、「エルサレム」や「ミルトン」などの預言書も残している。

晩年は病気と貧困に苦しみながら制作に励み、彼が偉大な詩人と称えたダンテの「神曲」の挿絵の制作に死の直前まで取り組んだが未完のまま69歳で旅立った。

顔の輝かない人は決して星になることがない。

この格言は、心の中に意欲や理想を求める気持ちなどを持つ心豊かな人は、外からの光ではなく内面からの光で顔が輝き、その人間性から人々の憧れや尊敬を集める星のような存在となるだろうという意味が受け取られ、内面からの輝きを持たない人は憧れの存在にはなりえないだろうという彼のメッセージが受け取れる。

ブレイクの神秘主義思想は生前には理解されずその作品は精神に異常があるとまで酷評されたが、本人は人間の精神や魂の追求を続け、最後まで旺盛な制作活動を続けた。

善と悪を併せ持つ人間の精神性と人間存在の平等性という根本的な考えのもと自身の追求する個性の発現に芸術を見出そうとしたブレイクは貧困苦の中にあってもその顔はきっといつも輝いていたに違いない。




・参考資料
https://www.artpedia.asia/william-blake/