「われわれは、光のもとで暗闇を、幸福のもとで悲惨を、満足のもとで苦痛を思い起すことはまれである。しかし、その逆はいつもである。暗黒のなかでは、我々の想像力は、明るい光におけるよりもたくましく働くのを常とする。」

イマヌエル・カント(1724~1804年)
イマヌエル・カント(1724~1804)は18世紀を代表するドイツの哲学者で「近代哲学の祖」とされている。その哲学は現在に至るまで多方面に大きな影響を与えている。
カントは1724年に当時東プロイセン(旧ドイツ)の首都ケーニヒスベルクで、馬具職人の第四子として生まれた。13歳で母親が死去し、自活して暮らさなければならない日々となる。
16歳でケーニスベルク大学に入学し、自然学を専攻し研究する。22歳の時に、父親が死去し、大学の中途卒業を余儀なくされる。
その後、約10年間は家庭教師をして生計を立てていたが、31歳の時にケーニスベルク大学の私講師となり職業哲学者の生活を歩み始める。その後様々な研究論文を出版し、46歳で教授となる。
57歳で「純粋理性批判」、64歳で「実践理性批判」、66歳で「判断力批判」の三批判書を発表した。ここでの「批判」とは、否定的に語るという意味ではなく、「あらゆる前提を排除して徹底的に考える」という意味であり、物事を根源的に吟味することを指している。
各書のテーマは簡単にまとめると以下のようになっている。
「純粋理性批判」は 「人間は何を知ることができるか。」
「実践理性批判」は 「人間は何をすべきか。」
「判断力批判」は 「人間は何を望んでいるか。」
また、カントは「永遠平和」を理想とする世界平和の実現に向けた考えについて提唱した。その考えは現在の国際連盟や国際連合の原理ともなっている。
晩年は心身の衰えを感じながらも精力的に哲学の研究を続けていたが、1804年79歳で死去。最期の言葉は「これでよい。」だったという。
われわれは、光のもとで暗闇を、幸福のもとで悲惨を、満足のもとで苦痛を思い起すことはまれである。しかし、その逆はいつもである。暗黒のなかでは、我々の想像力は、明るい光におけるよりもたくましく働くのを常とする。
――私たちは、幸福な場面で不幸な場面を思い起こすことはほとんどないが、不幸な場面になると幸福な場面を強く求め、望むのが常である。そして逆境の場面では、私たちが生み出す考えや想像力こそが、暗闇を明るく照らす光よりも、より強く逆境の暗闇を明るくし、その解決に向けて働く力となるのが常である。――
この格言は、「理性」について追究したカントの深い洞察力から生まれた格言であることを感じる。
カントは気象学者としての顔も持ち、今日の気象予報の根拠となる考察を行っていたことが記録されている。
カントは、近代哲学史を語るうえで欠かせない人物というだけでなく、世界平和を提唱し、気象学の分野でも業績を残した偉大な人物であった。彼の功績を学ぶことは、現在および未来の私たちに多くの気付きをもたらしてくれることだろう。


