「プライド、嫉妬、強欲。これらは全ての人の心に火を点けた火花である。」

ダンテ(1265~1321年)はイタリアの詩人、哲学者、政治家であり、ルネサンス文学の先駆者といわれている。代表作「神曲」はイタリア文学最大の古典とされ、世界文学史上、重要な位置を占めている。

ダンテは、イタリアのフィレンツェの金融業を営む小貴族の家に生まれた。少年時代の記録は乏しいが、ラテン語の古典文法や修辞学、哲学、倫理学などを学んでいたとされている。

その後ボローニャ大学に入学して哲学、法律学、天文学などを研究して過ごした。30歳の時には積極的に市政に参画して、政治活動を行った。しかし、政争に敗れて罪に問われ、フィレンツェから永久追放の宣告を受け、以後、各都市を流浪する生活となってしまった。

北イタリアに安住の地を求めつつ、苦渋の生活の中で1307年ごろに叙情詩「神曲」が書き始められた。神曲は「地獄」「煉獄」「天国」の3部からなり、各篇 34歌、33歌、33歌の計100歌で構成されており、約15年かけて執筆され、ダンテの死の直前に完成した。

神曲には、9歳の時に初めて会い、ダンテが心を奪われた相手、ベアトリーチェが愛を象徴する存在として神聖化されて描かれている。また、ダンテが政争の渦中で体験した政治的不義に対する強い憤りが込められた内容となっている。

ダンテは1318年ごろからラヴェンナに定住することができたが、1321年ヴェネツィアへの旅の途中にマラリアにより亡くなった。56歳であった。

プライド、嫉妬、強欲。これらは全ての人の心に火を点けた火花である。

——誇り、自信、うらやみ、欲深さは、全ての人の心を刺激して感情を高ぶらせて活発な行動や能力の発揮を生み出す火の粉のようなものである。——

ダンテの作品は、政治と文学との激しい葛藤の中で生み出された。神曲は豊かな人間の感情がいきいきと表現されており、近代文学の誕生を意味する最初の傑作とされている。

その著述意欲の根底には、不本意に課せられた罪による追放に対する怨念や怒りがあった。

この格言は、負の感情として考えられている「プライド、嫉妬、強欲」という感情は、時としてそれによって感情を高ぶらせて人の能力を引き出したり、能力を存分に働かせるきっかけとなることがあるということを言いたかったのではないだろうか。

ベアトリーチェへの純粋な思いは叶わず、大きな悲しみを受けたダンテであったが、その悲しみを生涯、彼女を永遠の存在として賛美していく気持ちに切り替えて彼女を讃える作品を創作したダンテの心情がこの格言からも伺えるように思えるのである。


・ウィキペディア
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