灯台―海の光の道しるべ

11月1日は灯台の日である。
海の安全を守る灯台は塔状の建造物で、最上部には協力な光源が設置され、航路標識の代表とされる。

世界で一番古い灯台は、紀元前279年にエジプトに立てられたものであった。塔の上に設置された大理石の反射板の前にある火桶で松や竹や枯草などを松脂に浸して燃やしたもので、その火の光は航路の目印として夜間は50Km先の海上からでも見えたと言われている。

時代を経て1595年に世界で最初の灯台がボスポラス海峡に誕生した。石造の小塔を建設し、ガラス張りの灯篭の中で20個の銅製皿に灯油を燃やして光を発する「海のあかり」だった。

19世紀まで「海のあかり」には木材や石炭の火がで使用され、光が到達する距離も限られていたが、1822年フランス人によりフルネルレンズが考案されたほか、石油やガス等による安定した新しい光源が得られるようになり、灯台の機能は飛躍的に向上した。1823年には世界で初めてフレネルレンズが導入された灯台が登場し、その到達距離は約39Kmにも達した。

日本における最初の灯台は1869年2月に点灯した神奈川県の観音埼灯台であり、その着工日である11月1日が「灯台記念日」となっている。観音埼灯台は光源燃料に落花生油を使用していたが、従来のかがり火などによる光とは比較にならない大きい光力と光の到達距離を有していた。

1883年には全ての日本の灯台が石油を利用するようになった。1901年には日本最初の電灯光源の灯台が建設され1978年には全ての航路標識が電化された。

灯台の光源にはキセノンランプ、ハロゲン電球、メタルハライド電球などが使われていたが1989年には神戸苅藻島(かるもじま)西灯台に最初のLED光源が採用された。

しかし従来の大型灯台用のレンズの光源をLED化することは困難でありパワーLED光源COB(Chip On Board)がそれを可能にした。COBとはパワーLEDの一種で2cmの中にLEDチップが169個結合したもので、従来のハロゲン電球と比較すると同じ明るさで消費電力は1/10、50倍の長寿命の性質を持つものである。平成31年4月から、釧路埼灯台では従来の大型ハロゲン電球をCOBに交換して運用を開始している。

また、灯台の光り方には多くのパターンがあり、他の灯台と間違えないように工夫がされている。光の色は白、赤、緑の3種類が主で他にわずかに黄色のものがある。また、光り方には、決まった間隔で1回や2回光るもの、決まった秒数光っては休み、また光るという繰り返しで光るものなど様々な光り方があり、色と組み合わせた光り方が灯台ごとに決まっている。

全地球測位システム(GPS)機器などの発達で昔に比べれば灯台の重要度は薄れてきていると言える。しかし灯台の光は、航海をする船舶にとって常に心強い安心の光であり、その光は「海の光の道しるべ」という重要な役割を果たしながらこれからも光輝き続けていくことだろう。