夏の陰影

ビビットな色彩の真っ青な空と瑞々しい緑の草木。それを背景にして映えるコントラストがハッキリとした立体感のある入道雲。夏の風景は、体感の蒸し暑さとは裏腹に爽やかなインパクトを伴って私たちの目に飛び込んでくる。

この景色を生み出しているのが、夏の強い日差しと、それによってできる「かげ」の存在である。「光が多いところでは、影も強くなる─ゲーテ」。今回は、光と表裏一体の関係にある「かげ」について注目したい。

皆さんは、「陰」と「影」の違いをご存知だろうか。そのどちらも読みは「かげ」であり、「陰影」とはかげのことを指す。しかし、実は両者には明確な違いがある。
「陰」とは、ものに帯びるかげのことで、光が当たらない所を指している。そのため、言葉として「隠れた」「目立たない」といった意味を持っている。英語で表すと「Shade(シェード)」である。
対して「影」とは、光を受けたものが地面に落とすかげのことで、光が物にさえぎられてできる暗い部分を指している。「影」は、必ずそれを生み出す元である「光」と対になっており、光が生み出す姿、形を意味する。英語で表すと「Shadow(シャドウ)」となる。

夏の強い日差しを受けて自分の足元から真っ黒く伸びるものは「影」であり、暑さに耐えかねて太陽の光から隠れようと逃げ込む先は日の「陰」である。

光と陰影。
夏はその両方を鮮烈に楽しむことのできる季節だ。