光のパブリックポリシー6 夜間景観照明3


美しい夜間景観は経済的効果を与えることに加えて、見る人々にやすらぎや癒しなどの目には見えない心理的効果を与えてくれる。

神戸市は2004年から夜間景観形成基本計画を策定し、ポートタワーなどのランドマークや歴史的建造物のライトアップや神戸ルミナリエなどの光のイベントに積極的に取り組んできた。神戸市が市民から募集した「心に残る神戸の風景」では神戸ルミナリエなど夜間の風景が昼間の風景よりも圧倒的に多かったという。*1 人々に夜間景観が魅力的になって受け入れられていることが伺える。

神戸ルミナリエはコロナの影響でここ2年は開催中止となっているが、阪神・淡路大震災の犠牲者の鎮魂や復興を願って1995年から毎年12月に開催しており、震災後の人々に希望や慰めを与えるものとして多くの人に支持されて続いてきた。

京都の寺院では1992年に清水寺、1993年に永観堂、1994年に高台寺と次々と夜間拝観を行う寺院が増えてきた。特に秋の紅葉の時期には昼間とは異なる幻想的な夜の紅葉風景を鑑賞する楽しみを求めて観光客が毎年押し寄せるようになっている。

人々の心に訴える夜間景観として注目するべきものにイルミネーションがある。イルミネーションは日本では1990年ごろから全国各地で盛んになり、今日では魅力ある夜景のイベントとして各地で多くの人の目を楽しませている。*2

イルミネーションの魅力は非日常感や精神的な解放感を味わうことができ、華やかな光を楽しむことができることである。主に冬に多く見られたものだったが、最近では季節に関わらずに楽しむ夜景照明となっている。

夜間景観照明が盛んになった原因の一つにはLED照明の出現がある。多種類の色や明るさなど光の調整を幅広く行うことができ、省エネでもあるLEDは夜間景観照明の可能性を大きく広げたと言える。

現代人の心に響く夜間風景の創出は、ストレスの多い現代を生きる人々にとって今後ますます必要なものとなっていくのではないだろうか。照明デザイナーのLED照明の特性を生かした計画による美しく快適な夜間景観は、多くの人に喜びや楽しみなどを与え、生活に潤いをもたらし、心に残る風景として人々に愛されていくものとなることだろう。

■参考文献
*1  http://www.yubikiri.net/daido/files/yakankeikan.pdf
*2 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%83%9F%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3