【四季の光を詠んだ歌】冬の月光

12月。もうすぐにやってくるクリスマスに向けて、街は様々な装飾やイルミネーションを纏い賑やかに輝いている。冬の光と言えばそういった華やかなものが連想されるが、今回ご紹介する和歌では、冬の自然がもたらす神秘的な光について詠んでいる。

朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪
空がほのかに明るくなってきた夜の明け方、あたかも有明の月かと思うほどに明るく、吉野の里に真っ白な雪が降り積もっているではないか。

坂上是則

この歌は古今集に収録されている坂上是則が詠んだ歌である。

「有明」とは夜明けを指し、「有明の月」とは夜が明けてもまだ空に残っている月のことを言う。夜が明けたばかりの青い空に溶け込むように浮かび上がる白い月の姿は、なんとも儚げで美しい。
雪の日は夜でも明るい。これは白い雪の光の反射によるもので、これが降り積もり辺り一面を覆ったとなれば、たとえ夜の時間帯だとしてもそれを忘れてしまうほどの明るさを感じることだろう。
降り積もる雪の高潔な純白を、青白く滲む神秘的な月の光と見立てて詠まれたこの歌は、刺すような寒さの中にある冬の日特有の光を見事に表現している。また、そんな冬の自然が生み出した絶景を見た作者の驚きや感動といった心情も感じ取れる。

イルミネーションやライトアップによる人工的で華やかな光。明け方の月や雪といったこの季節特有の自然が生み出す神秘的な光。冬は、相反する特徴を持ったそのどちらもが美しい光を堪能できる。皆さんは、どちらの光で冬を語るだろうか。