視覚と光5─ライト・トーナス値

私達人間の体は、視覚にも心理的なものにも影響されずに筋肉が照射された光線の色に反応して緊張、弛緩するということをご存知だろうか。

この現象は1910年にシュタインが実証したもので「ライトトーナス変化」と呼ばれている。
そして両目を隠して光が目から感じられない状態で、体にさまざまな色の光を当てて汗の分泌量や脳波等から筋肉の緊張度を測っていく実験を繰り返して分かったものが「ライト・トーナス値」である。人は色を目や精神からの影響を受けずに肌でも感じているということを実証したものである。

ライト・トーナス値は何にも影響されていない筋肉の状態を数値23とし、異なった色の光を筋肉に照射することによる反応を数値化している。それによるとベージュ・パステルトーン23、青24、緑28、黄30、オレンジ35、赤42、という値で表せるとしている。

数値が低いほど筋肉は弛緩しリラックスし、高いほど緊張し興奮していることになる。赤色の光が筋肉が最も緊張させ興奮させるものとなっており、ベージュの光は最も筋肉がリラックスする状態となる。

かのヘレンケラーも目は見えなくても色の感覚を持っていたことが知られており、色が与える私達の体への影響は大きい。そして体への影響は、心理的なものや生理的なものに関連していく。このライトトーナス値を元に色彩を考慮して空間を創造することはより良い環境づくりには欠かせないことであると考える。