低炭素社会に向けて6─世界の取り組み


地球温暖化に対しての世界の動きをみてみる。
国際社会で議論されるようになったのは1980年代であり、1988年に「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が設立された。IPCCは定期的に報告書をまとめ、最新の知見を提供している。

1992年に国連が「気候変動に関する国際連合枠組条約」採択した。1995年には国連気候変動枠組条約における締約国会議であるCOP1が開かれ、温室効果ガス排出削減等の国際的枠組みが協議された。

1997年、COP3において先進国に「温室効果ガスの排出削減を義務付ける合意文書」(京都議定書)がまとまった。

京都議定書では先進国ごとに温室効果ガス排出量の削減目標が設定されたほか、国際的な協調による排出量の削減を促進する仕組みを導入した。そして先進国全体が温室効果ガス排出量を2008年から2012年までに1990年比で少なくとも5%減少させることを目標として掲げた。日本は温室効果ガス排出量を2008から2012年までに1990年比6%減という目標を掲げ、この目標は2015年に達成している。

2015年にはCOP12において「パリ協定」が採択された。このパリ協定の内容は、「すべての国に適用」され、「包括的」で「長期にわたり永続的」に「前進・向上する」という特徴を持っている。

パリ協定では、世界全体で産業革命前からの世界の平均気温上昇を「2℃未満」に抑え、加えて平均気温上昇「1.5℃未満」を目指す努力をし、そのためにできる限り早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と森林などによる吸収量のバランスをとるという長期目標を掲げた。

パリ協定が採択されてから5年を迎えた今年12月、世界の首脳級の会合がオンラインで開かれ、70か国以上の首脳が温室効果ガスの削減や温暖化の影響の軽減に向けて取り組みを強化する姿勢を示した。※1

各国の目標を以下に記す。
● 日本 …… 2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにすることを目指す。 
● 中国 …… 2030年までに2005年比でGDP当たりのCO2排出量を65%以上削減し、2060年までに実質ゼロを実現できるよう努力する。
● EU …… 2030年までに1990年比で温室効果ガス排出量を国内で少なくとも55%削減し、2050年までに実質ゼロを目指す。
● 米国 …… トランプ政権のもと2020年11月にパリ協定を正式離脱したが、新大統領になるバイデン氏は12月、政権発足と同時にパリ協定に復帰するという声明を発表した。そして遅くても2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指すとしている。
● 英国 …… 2030年までに1990年に比べ排出量を少なくとも68%削減する。
   
パリ協定が採択された2か月前には「SDGs」(持続可能な開発目標)が国連サミットで採択されている。持続可能な開発目標として設定された17のゴールうち多くの項目が環境に関係するものとなっており、SDGsも先進国、開発途上国を問わずに全ての国に適用された国際目標として気候変動に関しても重要な役割を持つものとなっている。
 
 
※1 パリ協定から5年 各国首脳ら 温室効果ガス削減の姿勢示す. NHK NEWS WEB. https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201213/k10012762161000.html