新しい照明分野8―インスタレーション・アート


インスタレーション・アートとは、個別の作品としてではなく、展示する空間ごと作品として捉えるものである。複数の要素により成り立つもので、彫刻、絵画、映像、音楽、照明など様々な媒体を使って作られる。芸術のみならず建築、デザイン、科学などの領域とも密接に関連しているアートである。

従来の美術鑑賞とは異なり、個々の作品を鑑賞するというより、見る人は展示室に入り全身でその作品の世界を体験し、味わうことになる。五感を駆使して作品を体験する参加型の芸術作品といえる。空間を具体的に使用することによって芸術作品が観客に直接的に訴えかけることを目的とする作品で新しい視点を提供することができる。

インスタレーションは1970年代から広まり、絵画や彫刻など既存のジャンルに収まりきれない作品をまとめて呼ぶようになった。次第に概念的な側面を持つようになり、芸術作品の空間的側面を探求することになった。現代では、実験的で自由度の高い媒体でメッセージや、アイデアを表現するための新しい表現方法を多くの製作者が模索し続けている。

インスタレーション・アートにおいて光は重要な要素であり、空間の魅力や視覚的な効果を高める演出には欠かせない。床や壁を照らしたり、反射光を利用することで、空間を広く見せたり、空間の奥行きを深く見せたりすることが可能である。また、光の明暗や色彩により幻想的な雰囲気や不思議な雰囲気などを創出できる。

音と光が絶え間なく変化するインスタレーションが展開する展示の場合、場所によって作品の内容や見る人の体験も変わっていく。空間によって変わる音と光を体感することは、刺激的で興味深く、鑑賞者は作品との対話を通して個人・空間・環境にまで視野が広がる。また、インスタレーション・アートを体感することで、光によって希望、幸福、安らぎ、楽しみ、などの感情を呼び覚まされ、内なる自分と向き合いつつ歩いていく姿勢につながる。

近年、パンデミックにより平穏な日常に大きな変化が訪れ、世界は広く閉塞感、不安感に包まれた。その中でも人々は強く生き続けようとし、未来を見据えて歩み続けてきた。この時期、この状況だからこそ、見る人が一緒の空間で、生きる喜び、楽しみを感じて希望を持てるように、というメッセージが込められたインスタレーション・アートの展示会が世界中で開催されている。

インスタレーションは、技術の発展と共に今後さらにその表現は豊かになっていき、見る人に忘れられない圧倒的な体験を提供していくものとなることだろう。

参考資料
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3