挿す光


『刺す』からは鋭い痛みを感じる。夏の日差しはまさに「刺す光」と言えるだろう。
『差す』からは指向性があり、少し柔らかい印象を感じる。雲間から除く光はまさに「差す光」だ。
では、『挿す』はどうか。光という単語と共にはまず使われない漢字だろう。「挿す光」と表現した場合、誤った表現であるとの指摘が多いのではないだろうか。
しかし、今回はあえて「挿す光」について考察する。

「挿す」とは『1:細長い物を、他の物の中に突き入れる。 2:挿し木をする。 3:(「差す」とも書く)刀などを帯の間を通して挟み入れる。』という意味を持つ。
3つの意味を見ると、全ての意味において物体を手に取って行われた行為を表現している。つまり、「挿す光」とは質量を持った、手に取ることが出来る存在なのではないだろうか。

調べると、光がそのまま物体になったような照明が数多くあった。その多くはガラスファイバーやポリカーボネートといった、20世紀に発明された近代的な素材が用いられていた。
細く微細に揺らぎながら自立した姿は、地面に光が挿されているように見え、まるでススキを連想する。
「挿す光」とは、近代的な素材を使用した照明が展開されてきたことによる新しい光の在り方なのではないか。

参照:
https://www.artemide.com/subfamily/2080152/reeds-outdoor#
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/knowledge/105#section1
https://www.weblio.jp/content/%E6%8C%BF%E3%81%99