アンタークチサイト

気温が上がり、雪解けの季節がやってきた。

雪の主成分は氷であるため、暖かい気温が続けば解けるのは当たり前である。しかし、実は鉱物にも同じような性質を持ったものが存在する。今回はそんな珍しい鉱物である『アンタークチサイト(南極石)』について紹介していく。

 

アンタークチサイトを初めて発見したのは日本の南極観測隊と言われている。南極大陸のドンファン池にて新鉱物として発見されたこの鉱石は、ハロゲン鉱物という種に分類される、塩素やカルシウムなどを主な成分としている針状結晶である。

 

アンタークチサイトの特質は、鉱物であるにも関わらず、室温程度で融解してしまうほどの融点の低さにある。アンタークチサイトの融点は25度であり、つまり結晶としての姿を確実に保つには冷蔵庫で冷やし続ける必要がある。そのため、鉱物ではあるが取り扱いが難しく、アクセサリーなどの加工品は存在しない。

 

写真や標本として見ることができる結晶状のアンタークチサイトであるが、その姿は透きとおっていて神秘的である。個体として存在する条件が限定的であるが故に際立つ、淡く儚くも美しい光の輝きを感じられる。

 

個体、液体それぞれの性質から光の輝きを観察できる魅力的な鉱物、アンタークチサイト。天然結晶の購入はもちろん、簡単な材料で人工結晶を自作することもできるとのことなので、この機会に実物を観察してみてはいかがだろうか。