脱炭素社会の実現に向けて10─グリーンインフラとしての公園


【該当項目】SDGsの各項目について照明分野からの働きかけ
③健康的な生活を実現する照明計画
⑪町に光で安全を
⑫地球にやさしい光環境
 
 
低炭素社会の実現とは、省エネルギーを推進し二酸化炭素の排出を抑制するというエネルギーの観点に、人間が健康で精神的にも豊かな質の高い生活を送ることが出来る社会の実現という観点を加えて達成すべきものであると考える。

日本は主要先進国の中では労働生産性が特に低くなっている。昨今では働き方改革により、労働者にとっての働きやすさの実現が求められ、健康経営に力を入れる企業が増えており、労働生産性への改善が期待されている。従業員の健康度が上がり生産性が増すということは労働時間が短縮され、効率的な労働システムが確立されることで低炭素社会への貢献に繋がる。

今回より人間の健康度の向上や生産性の向上に焦点を当てて脱炭素社会への働きかけについて考察してみる。

今回はグリーンインフラとしての公園を取り上げる。
グリーンインフラとは「自然環境が有する多様な機能を積極的に活用し、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりを進める取り組み」とされている。※1
複数の機能を発揮する多機能性が特徴である公園はグリーンインフラの一つである。公園は緑分野のみならず、都市計画や健康福祉、教育や防災、産業振興など多くの分野に関連しており、公園は豊かな価値を有していると言える。
公園の緑は二酸化炭素を吸収し、また都市のヒートアイランド現象の緩和を図るなど低炭素に貢献している。公園は人間の健康増進など多くの機能を持つ価値ある社会資本ストックである。が、果たしてその機能を十分に有効活用できている公園がどのくらいあるだろうか。
公園は本来は憩いや安らぎを創出し、私達の生活の中にうるおいを与えてくれて生きる活力を得る場として魅力的な空間のはずであるが、いつの間にか多くの公園が魅力のない空間となってしまっている。

しかし数年前から民間の力を導入して活性化を図ることにより新しい魅力を持った公園が多く生まれてきている。また近年、コロナの影響もあり、公園や広場、オープンスペースが都市生活に必要な空間として再認識され、利用が著しく増している。公園の本来の利用価値を再構築することでより魅力ある空間となった公園は、脱炭素でレジリエントな持続可能な社会と経済を新たに構築するために必要な場として大きな役割を果たすことになるのではないだろうか。

一般的な公園の照明は安全性を図る目的で設置されており、暗い印象が強い。これからは人々が楽しくにぎわい、交流を図ることができる空間としての公園を照明デザインで演出し、昼間とは異なる夜の美しく華やかな空間とすることが求められるのではないだろうか。

脱炭素社会の実現に向けた環境問題の対策は、基本的には環境負荷の低減というマイナス手法に着眼点が置かれてきた。環境の持つ価値の創出によるプラス手法の解決法として、グリーンインフラとしての公園の在り方を再考する時なのではないだろうか。

そして人間にとってストレスを解消し、健康に寄与し、生きる喜びを感じることが出来る解き放たれた空間としての公園を照明の光で精神的な安らぎや高揚感を感じられる魅力的な空間とすることは、持続可能な脱炭素社会への一つの道筋をつけることになるのではないかと考える。
 
 
※1 グリーンインフラポータルサイト. 国土交通省. https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000015.html