低炭素社会に向けて4─世界の温暖化の影響(3)

前回に引き続き世界の温暖化の影響についてみてみる。

●海面水位上昇
氷河や氷床が融解して海に流れ込んだり、海水の温度が高くなることで膨張することにより海面の上昇が起きている。
20世紀には全世界で15cm程度の海面上昇が起きた。現時点でその上昇ペースは年間3.6mmと倍増している。気温上昇が1.5℃の場合は2100年までの上昇は26cm~77cmと予測され、1.5℃~2℃の場合は南極氷床の不安定化、グリーンランドの氷床の消失が起こり、数百年~数千年にわたり海面水位が数m上昇する予測となっている。
海面水位上昇は水没してしまう島や地域を生じ、世界各地に及ぼす影響は計り知れない。

●海面水温上昇
地球表面の7割を占める海洋は地球温暖化の進行をやわらげる役割を担っている。例えば、1971年から2010年までの40年間に地球全体で蓄積された熱エネルギーの9割以上は海洋に吸収されている 。また、地球温暖化の原因である人間活動によって放出された二酸化炭素の約3割を海洋が吸収して、大気中の二酸化炭素の濃度の上昇を抑えている。
しかし海面の水温はこの100年間で0.52℃上昇している。海面水温の上昇は多くの水分が大気中に蒸発し、大雨や猛烈な台風を招く原因となる。また、海水温の分布や海流が変わることで、長期間にわたり気候に影響を与えるとされる。

●感染症の拡大
蚊を媒介とする感染症(マラリア、テング熱等)が増加している。WHO が1998 年のエルニーニョ現象による地域気象の変動によって発生が増加した感染症の分布を整理したうち、マラリアなどでは降雨の変化の影響が大きく、また、とくにバングラデシュで発生したコレラは、海面温度や海面上昇により関与するプランクトンの分布の変動が影響していると考えられている。温暖化が進むとさらに感染症の被害が拡大すると考えられる。※1

●主要穀物収穫量の低下
気候変動は食料の生産量とも密接な関係がある。1960~2013年に観測された気候変動が小麦、米、トウモロコシの収穫量に与えた影響では世界の温帯地帯、熱帯地帯のいずれの地域においてもマイナスの影響が出ている。

●家畜への悪影響
夏期の高温による、乳用牛では乳量、乳成分の低下や、繁殖成績の低下、死亡、豚やブロイラーでは増体・肉質の低下や死亡が報告されている。

記したように、温暖化は、気候、食糧、自然生態系、自然災害、健康など世界の様々な分野にわたり大きな影響を与え、甚大な被害を引き起こしているのである。

※1 温暖化と感染症. 環境省. https://www.env.go.jp/earth/ondanka/pamph_infection/full.pdf